どこか似ていたはずの僕たちは
春が好きだと言った君と。
春は嫌いだと言った僕と。
どこか似ているはずの僕たちも、春の好き、嫌いについては意見が別れて、なんでそう思うのかを永遠と馬鹿みたいに討論しあったのを覚えている。あ、 ''永遠と'' は嘘だ。たぶんもっとずっと短かったし、討論と呼べるものでもなかったな。
春は世界の全てが無理やりに眩しく見えて、少しくらくらする。急に視界が開かれていき、心は追いつけなくて、疲弊する。どきどきもわくわくも僕の許可なく無遠慮に押し寄せる。
だから、春は苦手だ。
っていう僕のすこし歪んだ持論に君は、なんだか詩的だねぇ〜とか言いながらにやにやしてからかってきて、その笑顔が春と同じように眩しくて少しくらくらした。
春が好きだと言ったわたしと。
春は嫌いだと言ったあなたと。
どこか似ていると思っていたわたしたち。あなたが春は好き?なんて質問をしてきて、わたしが、
好きだよ。だって暖かくなって、お花見とかもできるしわくわくするじゃない。
って答えたら。
そっかー。まあ、そうだよね〜。
って言いながらどこか少し不満気だったのを覚えてる。そこから間を置いて、僕は嫌いなんだ。って言って、なんだかよく分からない理由を話してた。
僕らはいつも少しずつどこか同じで、
少しずつ大切な何かが違ってた。
わたしたちはブラックコーヒーがすきだった。
僕たちはRADWIMPSがすきだった。
わたしたちはローソンよりもファミマがすきだった。
僕たちは伊坂幸太郎がすきだった。
ほんとうに、、??
わたしたちなんとなくどこか似てたよね。
どこかは分かんないけどなんとなく、ね。
って言って君が切なそうに笑う。
僕もそう思ってたよ、って言ってからすぐ、
ううん、やっぱり、僕らは違ってた。
ちっとも似てなんてなかったよ。
春と冬くらい真逆の人間だった。
何、それ。
最後まで詩的だねえ〜。
なんて言ってきて、
君はまた春みたいに眩しい笑顔で笑うから、僕はやっぱり少しくらくらしたんだ。
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