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予算が許すなら「ENVE SES 4.5」最高の一本だ。

■ はじめに──機材を変えると「楽しみ」が何度も増幅する

2月に入ってから、Blackinc 48/58から、ENVE SES 4.5に履き替えました。僕は決して速くも強くもない、レース出走もしないホビーサイクリストですが、それでも「かなり高いレベルでサイクリングを楽しんでいる」という自負があります。なぜなら、高性能な機材を嗜み、その微妙な差異を存分に味わうという非常に贅沢な体験に加え、日本のあちこちで最高のライド体験えているからです。それが高いレベルかと言われれば個人的な思い込みであることは否定しませんw

同じ機材に乗り続けていると、それが当たり前になってしまい、良し悪しを感じにくくなります。どんなに高級なホイールやフレームでも、毎回乗っているうちに「こういうものだよね」と慣れてしまう。そうなると、喜びや感動が少しずつ薄れていくのです。

しかし数カ月ごとにホイールを履き替えると、改めて「前のホイールにはこんな良さがあったんだ」と再発見できたり、新しいホイールの「こんなに違うんだ」という感動を味わえたりします。その瞬間が、僕にとっては非常に幸せな瞬間でもあります。いわば「機材を変えるときは、ライドの楽しみをもう一回得られる」無限サイクルなのです。という意味で2セット所有はオススメですね。

「Blackinc 48/58」「ENVE SES 4.5」を行き来する中で感じた差分や、両ブランドの背景、僕なりの評価(というかレビュー)を、まとめてみたいと思います。どちらも世界最高水準のホイールであり、それぞれに優れた点があります(当然かw)。最終的にはかなり個人的な好みやフィーリングの話になりますが、ホイール選びのヒントになれば書いた意味がありそう。それでは久々に「ENVE SES 4.5」を履いたうえでのレビューをどうぞw
(ただしまー以前に書いた内容とほぼ変わらない説はある)


■ ENVEというブランド──アメリカンクラフトマンシップの結晶

まず、ENVE(エンヴィ)について少し書いておきます。ユタ州の本社でカーボン製品を作り続けているメーカーで、以前は「EDGE Composites(エッジ・コンポジット)」という名前でした。ブランド名が変わっても、カーボンを扱う職人気質はそのまま受け継がれています。

  • ハンドメイド・イン・USA
    近年、カーボン製品はアジア(特に台湾や中国)の大規模工場で大量生産されるのが一般的ですが、ENVEは自社でカーボンシートの積層から成形、仕上げまでを行うことにこだわっています。熟練の職人たちが「どうすればより高精度のリムを作れるか」を突き詰め、その技術が“SES”シリーズなどの高い評価へとつながっています。

  • プロ選手も選ぶ性能
    チームによる契約や縛りがあるため、誰もが自由にホイールを選べるわけではありませんが、それでも許されるならENVEを履きたいというプロライダーは多いと聞きます。実際、世界トップレベルの選手が個人的に使用している例もあり、性能面での裏付けがしっかりしているのです。例えばポガチャルですよね。

  • 価格と所有感
    ENVEのホイールは総じて価格が高めですが、クラフトマンシップとリム精度、そして独特の乗り味への評価があるため「費用対効果」というよりも「所有する喜び」と「乗ってわかる満足感」で選ばれる傾向があります。もちろん数字上の空力性能も優れていますが、最終的には「乗ったときの感動」を買うブランドのように思います。まーホビーサイクリストなので。


■ Blackincというブランド──Factorと共に磨かれた高水準

次にBlackinc(ブラックインク)について。こちらはFactor Bikesの関連ブランドであり、Factorの純正ホイールとしての立ち位置が強いです。Factorは自動車レース(F1など)や航空宇宙工学のノウハウを取り入れてバイク設計を行ってきたブランドで、高精度なカーボン成形技術に定評があります。そのFactorと同じ開発思想を共有するのがBlackincです。

  • すべての要素が“平均以上”
    Blackincのホイールは、軽さ、剛性、空力、耐久性などが非常に高い水準でバランスしています。これといった大きな弱点がなく、すべてが高水準という意味で「圧倒的万能感」があります。

  • カーボンスポークの採用
    特にBlackinc 48/58の大きな特徴はカーボンスポークを使っていること。これにより、ホイール全体の軽量化と回転性能の向上(かかりの良さ)が期待できます。ペダルを踏み込んだときのダイレクト感は、メタルスポークでは得られにくいものがあります。

  • 実際の使用シーンでのマルチさ
    リム高がフロント48mm/リア58mmという構成は、平坦巡航からヒルクライムまでそつなくこなせますし、ある程度の横風にも対応しやすい。加えて軽量スポークと高剛性ハブのおかげで、ストップ&ゴーの多いクリテリウム的なライドでもキビキビ走れる印象です。


■ 実際に乗り比べて感じる「乗り味」の差

ここからは本題の「ENVE SES 4.5」「Blackinc 48/58」を乗り分けたときの印象について。あくまで僕個人の感覚ですが、ある程度走り込んだからこそ見えてきた違いを挙げてみます。とはいえ大きな印象がかわることがなく、より鮮明あるいは確信となったという感じでしょうか。

▼ 1. ゼロ発進や低速域での“かかり”

  • Blackinc 48/58
    カーボンスポークの恩恵か、とにかく「踏み込んだ瞬間にスッと前に出る」感覚が強いです。信号スタートや10%以上の激坂で、脚を使う瞬間にハッキリとそのカカリの良さがわかります。軽量性も相まって、ゼロから加速する際のレスポンスの良さが際立っており、いわゆる“出だしの軽快感”は抜群です。最高。

  • ENVE SES 4.5
    決して重たいわけではありませんが、Blackinc 48/58と乗り比べると若干「よっこいしょ」という印象が出るのは否めません。もっさりというほどではないものの、“パッ”と飛び出す感じはBlackinc 48/58に軍配が上がる。特にストップ&ゴーが多い街乗りや、短いクリテリウム的レースだと、その差は少し気になるかもしれません。(クリテリウムでたことないけど)

▼ 2. 中速~高速巡航の“伸び”と空力感

  • ENVE SES 4.5
    ここが最大の魅力だと思います。時速30~35km/hを超えてくると、「永遠に速度が積み上がっていくんじゃないか」というほどの伸びやかさを感じます。これは単純な空力性能だけでなく、リムの剛性や作り込みが効いているためか、脚を回し続けたぶんだけ推進力につながる感覚があります。ロングライドや高速巡航が多いシチュエーションで、そのアドバンテージがはっきりと出ます。自分のライドスタイルにもあっているし、本当に気持ちが良い。

  • Blackinc 48/58
    速度域が上がっても決して遅いわけではなく、むしろかなり優秀ですね。この軽量性でのこの巡航維持力すごいなと思います。ただ、ENVE SES 4.5を直前まで履いていた状態で乗り換えると、「もう一段上の“スルスル伸びていく”感じが欲しい」と思う瞬間があります。カーボンスポークの軽さで加速性はとても良いのですが、超高速巡航の空力感・リムの“進み”についてはENVE SES 4.5に及ばない印象です。(印象です印象)

▼ 3. ヒルクライム──急勾配での踏み応え

  • Blackinc 48/58
    やはり軽量なカーボンスポークの効果が活きているのか、ダンシングで踏み込んだ際のダイレクトな感じが気持ちいいです。特に斜度10%を超えるような場面で、トルクをかけて立ち上がるときのレスポンスは素晴らしい。軽快感がずっと続きます。富士ヒルはBlackinc 48/58に決まりだな。

  • ENVE SES 4.5
    リムハイトがやや高いこともあって、中速域以上での伸びが主役というイメージです。もちろん登りでも十分速いのですが、「瞬時の軽快さ」に関してはBlackinc 48/58には及ばないかもしれません。ただし、ある程度速度が乗ったまま登りに入る場合は、ENVEの巡航性能がそのままアシストしてくれるので、決して遅いわけではなく“トータルのタイム”はむしろほとんど互角、あるいは速い可能性もあります。脚力によるという感じですね。

▼ 4. 横風・下りでの安定感と安心感

  • ENVE SES 4.5
    SES(スマート・エンヴィ・システム)という独自のリム形状で前後のリムハイトや幅が微妙に異なり、横風を受け流す設計になっています(らしい)。実際、横風が強い日でもハンドルを取られる感覚が少なく、下りのコーナリングでも安定性が高いです。ガッチリとした剛性のおかげで、ブレーキング時も安心感があります。

  • Blackinc 48/58
    もともとBlackinc 48/58というリムハイト差も、横風に対応しやすいバランスを考慮しているように思います。そこまで大きく煽られたりはしません。ですが、ENVE SES 4.5と比較すると「若干」ですが、風が強い時にハンドルへの影響がわずかに気になる場面もあります。軽量だからだろうか?あるいは機能せいか?w。


■ 「慣れ」という贅沢な不幸

ここまで書いていても思うのは、「どちらも世界最高水準であることは間違いない」ということです。いずれも50万円前後という高級高性能ホイールであり、設計や製造にも多大なノウハウがつぎ込まれています。正直、普通に乗っているぶんにはどちらを選んでも“不満”はないレベルだし、不満どころかポテンシャルを引き出せてるなんて思ってもいない。

ところが、僕は(幸運にも)両方を行き来することで微妙な違いを体感できるというわけです。これは非常に贅沢なことですが、同時に「これより下の性能には戻れない」かもしれないという不幸でもあるのですよね。一度こうしたトップクラスの機材に慣れてしまうと、ふだんは“ありがたみ”を感じにくくなるからです。不幸の入口というわけです。

  • 高級高性能ホイールに乗り慣れると、軽さや剛性が当たり前に
    「今乗っているフレームやホイールは軽い・剛性が高い」と思っていても、いつしか当たり前になり、乗り替えるまではその良さを実感しなくなる。

  • 一度下位グレードに戻ったときに初めて“あ、やっぱり違う!”と再確認
    逆説的に、良いものの価値を再認識するには、わざと少し格下の機材に乗るのが一番わかりやすいとも言えますね。良いものを知ると、でないものがわかるようになるということですね。

この「良い機材は不幸の始まり」という感覚は、ロードバイクに限らず、高級オーディオやハイエンドカメラなど、趣味の世界にはよくある話でしょう。一度でも高性能を味わってしまうと、それ以下が気になってしまうのです。


■ カーボンホイールの「2万km寿命」説と買い替えの口実

カーボンホイールには、しばしば「2万kmくらいが寿命の目安」という説があります(本当か?)。プロ選手がフルパワーで使い、ブレーキトラックやリムの剛性が目に見えて劣化する状態を想定していると思います。一般ライダーでも一つの目安として語られることがありますが、対して影響はないでしょうね。ただし。。。

  • 僕のENVE SES 4.5はすでに15,000km近い
    ということは、あと半年も履けば2万kmを超えてしまう見込みです。そうなると「もう寿命だから買い替えてもいいよね?」と自分に言い訳を始めるのがホビーユーザーあるある。でも実際にはまだまだ使える可能性も高いのですが、そこは趣味の世界なので「新型が出ているならそろそろ変えてみたい」という気持ちがムクムクと湧いてきます。

  • 本当に寿命が来るのか?
    一般的な乗り方なら、ハードブレーキングや落車衝撃が少ない限り、2万kmでいきなりリムが割れるわけではありません。ただし高負荷をかけ続けたことによる微妙な剛性低下はあるかもしれません。性能を100%発揮したい人なら、2万kmは買い替えのきっかけになる数値と言えるでしょう。など自分に言ってみる。

こうして、僕はまた「寿命が来たから仕方ないよね」という免罪符を手に、新しいENVE SES 4.5を購入するかもしれません。それほどに、このホイールがもたらす満足感は大きいということですね。


■ 50万円前後の予算ならENVEは“最強候補”の一角

ホイールに50万円というと、ロードバイク全体の価格帯でも非常にハイエンドな部類です。ZIPPやCampagnolo BORA Ultra、Roval Rapideなど、選択肢はいくつかありますが、それぞれに強みと弱み、フィーリングの好みがあります。その中で、僕が「これだけは誰にでも自信を持って勧められる」と思うのが、ENVE SES 4.5というわけです。

  • 空力と剛性のバランス
    完全なホイールほど汎用性が高い。しかもリム設計がよく考えられており、高速巡航が非常に気持ち良い。

  • 高精度のリムと丁寧な仕上げ
    アメリカ国内で職人たちが作るリムは、見た目にも美しく、歪みやフレが発生しにくい。多少の衝撃にも強い印象があります。

  • ブランドとしての魅力と所有欲
    高級品だからこそ、「いつかはENVEに乗ってみたい」という夢を持つサイクリストも多いかなと。実際に所有すると、その満足感は言うまでもなく大きい。

もちろん、「Blackinc 48/58だって世界最高峰だよ」という声はあるでしょうし、BORAやLightweight、Corimaなどを推す人もいるでしょう。しかし僕自身が「いま自腹で買うなら、最優先はENVE」と思えるだけの魅力があります。特にSES 4.5は、汎用性が高く、どんなコースでも力を発揮してくれるので、一本持っていて損はありません。というか一本なら「ENVE SES 4.5」にきまりですね。


■ 両方最高だが、“微妙な差”がライドを変える

最終的に、Blackinc 48/58ENVE SES 4.5は、どちらも文句なしに“最高レベル”と言えます。下手をすると、乗り比べても違いに気づかないほどの僅差かもしれません。しかし、その僅差こそがライドの印象を決定づけ、モチベーションや楽しさを大きく左右するのだと思います。

  • Blackinc 48/58のメリット

    • ゼロスタートでの鋭い加速感や激坂での軽快性

    • 軽量カーボンスポークによるダイレクトなパワー伝達

    • 空力やハンドリングのバランスも平均以上

  • ENVE SES 4.5のメリット

    • 高速巡航域での「永遠に伸びる」感覚がやみつき

    • 剛性感が高く、横風への安定性や下りでの安心感もバツグン

    • クラフトマンシップが生み出すブランドへの信頼と所有欲

僕にとっては後者の「巡航域での伸び」が何にも代えがたい気持ちよさであるために、総合的にENVE SES 4.5を高く評価するにいたっています。また、ブランドの歴史や哲学、アフターサービスの面でも安心感がある。そういった理由から「BlackincよりENVEのほうが上回る」が私の個人評価でございます。(異論は無限にあるでしょう)

とはいえ、両方を行き来しているからこそわかるごく微妙な差です。速さというタイムで見れば、どちらも大差はないかもしれません。でも、ロードバイクは機材との対話や感覚がすべて。自分が気持ちよく、ライドに没頭できるかどうかが重要です。フィーリングのあう好みの機材に出会えるのが最高ということでしょうね。


■ もしあなたが購入を迷っているなら──「高いけど、絶対に後悔しない」

もし、いまホイール選びでENVE SES 4.5を検討していて、「でも高いし、失敗したらどうしよう」と思っている方がいたら、僕は自信を持って「後悔しないはず」と背中を押したいです。

  • 価格は高い
    確かに50万円前後は安くはありません。でも、それだけの価値をホイールに見出せるかどうかという話です。

  • 走りの楽しさが一段アップする
    ホイールをアップグレードすると、バイクの乗り味が劇的に変わります。特にENVEほどの高性能ホイールなら、初ライドで「こんなに違うのか」と驚くでしょう。

  • 所有欲と満足感を長く味わえる
    ENVEを履くたびに、「ああ、やっぱりいいホイールだな」と感じる瞬間が続きます。多少の慣れは出てきても、履き替えのたびにその価値を再認識できるのです。

何より、趣味の世界では「欲しいと思ったときが買い時」とも言われます。これを言うとだいたい奥様には理解いただけないがw 迷っている時間もまた楽しいですが、その迷いが長すぎると、「あのとき買っておけばよかった」と後悔する可能性もありますね。僕としては、「ENVEを履くことでロードバイクへのモチベーションがさらに高まり、結果的により多く走るようになる」なら、十分に投資する価値があると思います。もう一段自転車が好きになると思う。


■ おわりに──機材選びがあなたのライドライフを豊かにする

以上、思いのほか、長文超大作になってしまった。ENVE SES 4.5Blackinc 48/58を中心に、贅沢な機材比較とそこから得た感想をまとめてみました。両方を所有しているからこそ感じる「慣れ」の怖さ、そして「やっぱりENVE SES 4.5、最高だな」と再認識する瞬間。その微妙な差を感じ取れること自体が、僕にとっては大きな喜びです。最後に整理するとこんな感じか?

  • 良い機材は、必ずしも「速く走るため」だけではない
    僕のようなホビーライダーにとっては、「どれだけライドが楽しくなるか」が一番の価値です。速くなくても強くなくても、機材によって得られる幸福感は大きい。

  • 本当に良いものを持つと、次の選択肢は限られてくる
    世界最高水準のホイールを2セット所有すると、それ以上のものはそう多くありません。それは嬉しいようでいて、次のステップに困るという悩みも生みます。

  • 2万km寿命という境界線
    走行距離が重なるほどにホイールは劣化し、性能が落ちていくと言われます。そこを買い替えのタイミングと考えるのもホビーの楽しみ方の一つ。僕自身も近々「もう寿命だから」と自分に言い訳をして、またENVE SES 4.5を買うかもしれません。

もし、この文章を読んでいる方が「ENVE SES 4.5を買おうか迷っている」という状態なら、ぜひ思い切って手に入れてみてほしいです。最初は価格に尻込みするかもしれませんが、手に入れて乗った瞬間、きっと「これはいい買い物をした」と笑顔になれるはずです。そして、ライドへの愛がますます深まるでしょう。僕自身がそうでしたから。重要なので繰り返しましたw

ロードバイクは、乗り手と機材が一体となる趣味です。最高の機材を手に入れれば、その楽しさは無限に広がる(はず)少なくとも、僕はそう信じています。これからも僕はENVE SES 4.5を履き倒して、その素晴らしさを噛みしめながら、たまにBlackinc 48/58にも乗り換えて「やっぱり違うなぁ」とにんまりそれぞれの違いを楽しみたいと思います。そんな幸せなホイール2セット持ちのサイクリングライフを続けていこうと思います。


それでは最後に大切なことが書いてある書籍をはっておきます。これを読んで明日ENVE SES 4.5を購入してください。


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いもひろし
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