いわゆるおしどり贈与について
本日も引き続き贈与・相続シリーズです。
通称おしどり贈与と呼ばれる、夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除 というものがあります。
おしどり贈与の概要
国税庁のタックスアンサーは以下
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
これ、租税特別措置法に規定されているかと思いきや、相続税法の方に規定されています(相続税法第21条の6)。
(贈与税法という法律はなく、贈与税についても相続税法で規定されています)
特に家については、長年一緒だった夫婦であれば、どちらかの名義となっていたとしても、内助の功含めある程度は両者共同で財産を築き上げていった結果が結実したものである、ということかと思います。
相続税にもいわゆる配偶者控除はある
相続税にもいわゆる配偶者控除(正確な言い方は「配偶者の税額の軽減」)があります。
配偶者の税額の軽減額=相続税の総額×①/②
①配偶者の法定相続分相当額(1億6千万円に満たない場合には1億6千万円)と配偶者の実際取得額とのうちいずれか少ない方の金額
②課税価格の合計額
一般には、より説明を省いて、「1億6,000万円または配偶者の法定相続分までであれば配偶者が相続する分は非課税になる」といった言い方がされます。(この言い方は、相続税の計算構造に対する誤解を招いていると思っているのですが、それはまた別稿)
そうすると、なにもおしどり贈与をすることがなくとも、とりあえずはこの相続税の配偶者控除に収まることがほとんどでしょうから、相続税の心配をする必要がある人は、そんなに多くないのではないかと思います。
不動産取得税が発生する・登録免許税も高い
不動産を取得する不動産取得税が発生します。不動産を取得して(登記が動いて)だいたい半年以上経って、忘れたころに納税通知書がやってくることで有名です。
不動産取得税は、相続時にはかからないこととなっています(地方税法第73条の7 (1))が、贈与時にはかかります。おしどり贈与だからといってこれがなくなるといったことはありません。
不動産取得税の税額は、住宅用土地家屋の場合、固定資産税評価額×3%が基本(地方税法上の標準税率は4%ですが、土地と住宅は3%)です。実際はこれに軽減措置が加わる場合が多いですが、ともかく、夫婦間なのでいままでと全く変わらず住んでいるのに、名義が変わったがために税金を支払う必要が出てきます。
また、不動産を登記する際には登録免許税がかかります。
固定資産税評価額に税率を乗じて計算するのですが
相続の場合:×0.4%
贈与の場合:×2.0% となります。
土地家屋の固定資産税評価額の合計が1,000万円だとしても、16万円も違います。
不動産取得税にしろ登録免許税にしろ、登記するからかかる(不動産取得税は登記の有無は本来関係ないですが)のであれば、登記しなければいい、登記するか否かは任意のはず、と思ったとしても、おしどり贈与の申告の際に登記事項証明書が必要になるので、登記をしないわけにはいかないので悪しからず。
多くの人は税額だけならおしどり贈与の意義は小さい
ということになると思っています。
それなりの財産を持つ人であっても、もちろん財産の種類によりますが、おしどり贈与のコストを加味してシミュレーションすると、2億円くらいの財産がないとコスト倒れする感覚です。
贈与しちゃうと、相続時の小規模宅地の特例も使えなくなりますし。
とはいえ、この手の損得のハナシは、個々の状況を基にシミュレーションしてみないとわからないところがあります。このnote含め、無料で大量にある記事だけではなんともいえませんので、鵜呑みにするのは危険です。(自己言及のパラドックス)
本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
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