「DX」×「人材育成」リアル最前線レポート vol.3~「デジタル人材」ってどんな人材?~
約2年間で100社を超える企業の方々とお会いさせていただきながら取り組んでいる「DX」×「人材育成」のテーマ。
今回も現場の最前線で自分自身が得た知見や実状をできるだけリアリティをもってnoteにまとめていきたいと思います。
第1回では「自己開示」と「Being(ありたい姿)」の関係性について、第2回では「DX推進の分断を防ぐ!」というテーマでまとめました。
そして第3回の今回は
「デジタル人材」ってどんな人材?
というテーマでまとめてみたいと思います。
まずはデジタル人材、DX人材と言われる定義について。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発信している「DX白書2021」では、デジタル事業に対応する人材を以下の7種類に分けています。
参考:https://www.ipa.go.jp/files/000093701.pdf
また、2022年4月に経産省が発表した「デジタルスキル標準」の検討会の中ではDX推進人材は以下の5種類に分かれています。
IPAと経産省から発表されている人材定義はベースとして非常に参考になります。
一方で、「自分たちの会社におけるデジタル人材」ってどんな人材?という問いに対しては千差万別、企業ごとに異なる認識、定義が必要です。
なぜならその企業の業界や企業規模、ミッションや理念、辿ってきた歴史、バリューや行動規範、会社の戦略や実際に働いている社員の個性によって一般的な「デジタル人材」という定義があてはまらないからです。
例えば「CX、顧客志向」という言葉を一つとっても頭の中に浮かぶお客様像は異なります。
「データサイエンス」という言葉の意味するところも取り扱うデータやアウトプットによって大きく異なります。
自動車業界における「ビジネスデザイン」と、人材業界におけるそれとはビジネスモデルもバリューチェーンも全く異なります。
また、「レベル感」についても考えなくてはなりません。
全社員に最低限求めたいレベル感はここまで。
営業職の場合はここ。
その先、専門人材にはここまで求めたいといった具合にグラデーションがあります。また、DXは未経験領域がほとんどなので成功も失敗も含めた「経験年数」や「対応案件数」とそれらの関与度も非常に重要になってきます。
実際にはこういった複雑な要素を踏まえながらDXの推進部門や人材開発部門が中心となって、その会社独自のデジタル人材の要件を定義するべく、言語化を試みている最中といったところです。
では、実際にデジタル人材の要件を定義するためにはどういったステップで進めていくのが良いのでしょうか?
下図はこれまでたくさんの企業の皆さまとお会いする中で見えてきたデジタル人材育成・開発のステップを簡単にまとめた概念図です。
まず主要なプレイヤーとして経営、DX部門、人事部門、社員という4つのプレイヤーを挙げました。
左から右に時間軸が流れているイメージです。
そして最初に重要になってくるのが、そもそもの「ありたい姿」です。
どんな会社にしたいのか?
社会にどんな価値を提供していきたいのか?
経営としての、ひいては経営者自身のありたい姿、パーパス、ミッション。
まずそれが体現され、言語化されるところが出発点になります。
また、同時に
自分自身の働く目的は何か?
仕事を通じて誰を幸せにしたいか?
という問いに対して社員一人ひとりが、自分自身の言葉でありたい姿(≒働く目的)をイメージできていることも重要になります。
この2つの両方あるいはどちらかが欠けているとDXはなかなか前に進んでいきません。
DX部門と人事部門は経営サイド、社員サイドそれぞれのありたい姿を引き出しブリッジさせる役割として情報提供やきっかけづくり、機会提供を行う重要なポジションを担っています。
経営、社員それぞれの「ありたい姿」がある程度言語化されて初めて会社としてのDX戦略と、社員一人ひとりのキャリアや今後得たいスキルをマッチさせることができます。
その2つが合致するとその企業独自の、本質的で意味のある「デジタル人材要件(DX人材要件)」を定義することができるようになります。
そして実際にはここに至るまでには様々なハードルがあり、膨大な時間と労力をかけて、それでもしっかりと言語化することや要件定義ができない企業も数多く存在しています。
それでも走りながらなんとか形にしていこうという姿勢が重要で、我々もそのような企業を伴走支援していることが大半です。
自社における「デジタル人材」が定義できると、具体的にいつまでに何人、どういう人材が必要か?というところが次第にハッキリしてきます。
そして、不足している人材のうちどれくらいの人数を外部からの採用で補うのか、自社の社員をスキルアップ・育成していくのかという計画を立てることができるようになります。
一部の企業では数年がかりでデータサイエンティストを外部から採用しつつ、内部で育成するための専門組織や学校のような機関を設置し育成を進めるなどの取組みも行われています。
デジタル人材の育成には、基礎知識の習得やそもそものマインドセットが非常に重要です。また、座学だけでなくより実践的な学習、実務を通じて経験する成功や失敗、他者に教える・発信する、といった段階と組み合わせがあります。
次回はデジタル人材の中でもまさに今最も求められる「ビジネスデザイナー」にフォーカスをあてて実際に我々が取り組んでいる事例など実体験を元にまとめてみたいと思います。
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