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「DX」×「人材育成」リアル最前線レポート vol.4~ビジネスデザインができないDX組織の末路~

約2年間で100社を超える企業の方々とお会いさせていただきながら取り組んでいる「DX」×「人材育成」のテーマ。

今回も現場の最前線で自分自身が得た知見や実状をできるだけリアリティをもってnoteにまとめていきたいと思います。

第1回では「自己開示」と「Being(ありたい姿)」の関係性について、第2回では「DX推進の分断を防ぐ!」、第3回では「デジタル人材」ってどんな人材?というテーマでまとめました。

そして第4回の今回は、

ビジネスデザインができないDX組織の末路


というテーマでまとめてみたいと思います。


2022年6月現在、実際に各企業のDX組織の戦略を見てみると未だに

『AIやメタバース対応のような、バズワードだらけ』
『いまいち分からない、宙に浮いた話ばかり』
『組織という箱と名前しか変わっていない』

といった形ばかりのDXを掲げている企業が多いのが実情です。

今回はなぜこのようなケースが発生するのか、どうすれば改善するのか、各種調査と私たちの経験をもとにご説明したいと思います。

『ビジネスモデル』と『戦略』が不在の組織


経済産業省では、デジタル技術を前提として、成長・競争力に強化に取り組んでいる『DX銘柄企業』の選定をしています。

経産省の分析調査によるとDX銘柄企業はROEが高く、挑戦する風土、適切な予算確保ができているなどの傾向があります。

経産省ではDX銘柄企業とそうでない企業の違いについても分析しており、
大きな違いは『ビジネスモデル』と『戦略』、加えて『経営トップとDX役員の良好な関係性』という結果が出ています。

デジタルトランスフォーメーション調査2021 の分析
2021年6月7日 経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課


参考:経産省 デジタルトランスフォーメーション調査2021 の分析:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-bunseki.pdf

この結果を私たちの経験から紐解くと、DXがうまく進まない組織ではDXが手段ではなく目的となっており、経営層とDX組織の間で、経営目標と課題をDXでどのように解決するのかという議論が十分になされていことに起因していると感じています。

DXの成功には『ビジネスデザイナー』が不可欠


ご紹介したような失敗を続けるDX組織が再生するために、まず必要なのは『ビジネスデザイナー』の育成にあるといえます。

※ビジネスデザイナーとは
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)による「DX白書2021」の中で"デジタル事業(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材"と説明されています。
https://www.ipa.go.jp/files/000093701.pdf

DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材

⇒このビジネスデザイナーという人材要件は「課題解決力」や「プロジェクト推進力」、「企画設計力」や「コミュニケーション力」などの能力・スキル・経験が求められ、営業・営業企画・マーケティング・経営企画などの職種から拡張しやすいとされています。

ではこのビジネスデザイナーはどのように育成していくのが良いのでしょうか?日々のOJTだけでは上記のスキルを持った人材の育成は難しいでしょう。

ビジネスデザイナーの育成は3層構造


これまでの我々の経験を通じて分かってきたことはビジネスデザイナーの育成は大きく3層構造に分けて進めていくことがポイントになるということです。

1層目はどのデジタル人材にも共通要素となる部分ですが、

・DX時代に求められるマインドセット
・DX時代の到来とともに認識すべき健全な危機感
・DXによって変わる未来に対するワクワク感

こういった思考や姿勢をまずは整えるところから始めます。
そのためにはベースとなるデジタル知識をeラーニングや勉強会などで身に付け、セミナーや講演に参加してDXを自分事化すること、世の中の事例に多く触れることで未来に対するワクワク感を高めるといった「座学によるインプット」がまずは必要になります。


そのうえで2層目ではインプットしたものを「アウトプットする」ことが重要になってきます。
自身が体験したデジタルサービスや、読んだ本、見たニュース、他社のプレスリリースなどをとにかくチームの仲間などにシェアすることです。
直感的にでも論理的にでも良いので「なぜこの情報や学びをシェアしようと思うのか?」を考えながらシェアすることで、そこから相互にコミュニケーションが生まれ、教え合い・学び合いの素地ができてきます。

大事なのは「継続すること」です。

継続していくことで相互コミュニケーションが徐々に活発になり、
ひとつの情報を捉える視点、視座、視野が広く深くなり、自身やチームの仕事にもDXが身近になり、業務との結びつきが強くなってきます。


3層目は実践経験のゾーンです。

最終的にはやはり座学でのインプット&アウトプットだけではなく、実践経験が重要になってきます。また、一言で実践経験と言っても細分化すると様々な経験が挙げられます。

・まずはとにかく実験、挑戦する
・その結果、小さな失敗と小さな成功が積み上がる
・積極的に他社との交流や新しいサービスに触れ「越境体験」する
・その結果、新しい価値観や物差しで実験、挑戦する
・失敗と成功と実験と挑戦を繰り返す

DX推進の責任者や人材開発の責任者は、こういった3層構造を意識した育成計画と枠組みを設計し、必要な予算や体制を整えながら対象者を選定・育成していくことが求められます。


次回はDX人材育成に必要な体制や予算、育成のKPIについて各社の悩みや取組み、実績について可能な限り掘り下げていきたいと思います。

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