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「タロットの世界」ユリイカ 詩と批評12月臨時増刊号が凄すぎる件と「思考ツールとしてのタロット」の紹介

ユリイカ 詩と批評12月臨時増刊号「タロットの世界」が出た。占いハウツーは一切なし。歴史、文化、宗教、美術などの側面からの論考、実践者の考察が中心のガチな内容にも関わらず大ヒット、すぐに増刷決定だとか。

いや、ぼくも寄稿しているので何だが、めちゃ凄い内容。いつもより大判(週刊少年マンガ誌の大きさ)で、2段組、文字と図版でびっしり。298ページだが、ゆるく組んだ単行本なら3冊ぶんぐらいの密度っぷり。
ぼく自身、まだ全部は読めてない。日々、時間を見つけては読み耽る至福の時間を過ごしている。

唯一無二のガチっぷりの内容の一端を感じてもらうために、目次を引用しよう。

鏡リュウジ責任編集
タロットの起源から日本における受容の歴史まで――日本初の決定版タロット論集

「はじめに」 鏡リュウジ
I Tarot in History
起源と黎明 15 世紀から18 世紀
「ルネサンスにおけるタロットの創出――「マンテーニャのタロット」をめぐって」伊藤博明
「「マルセイユのタロット」史 概説」夢然堂
神秘への道 18 世紀から19 世紀
「フランスのタロティストたち――クール・ド・ジェブランからヴィルトまで」今野喜和人
「エリファス・レヴィにおけるタロット占いの意義」武内大
黄金の夜明け 19 世紀末から20 世紀
「ライダー・ウェイト・スミス・タロット登場の背景」江口之隆
「カードの女王――ホロスコープに見るパメラ・コールマン・スミスとライダー・ウエイト版タロット」マギー・ハイド 鏡リュウジ訳
「ケルト十字展開法の解明」マーカス・カッツ 松田和也訳
「アベイ座のタロット・リーディング」メアリ・K・グリア 松田和也訳
新時代の霊性を求めて 20 世紀から21世紀
「二十世紀前半のロシアにおけるタロットオカルティズム」ロナルド・デッカー、マイケル・ダメット 今野喜和人訳
「タロット・ユング・エラノス」鏡リュウジ
「水瓶座時代のタロットとポップオカルティズム」伊泉龍一
「グラストンベリーのタロット事情」河西瑛里子

II Tarot in Japan
「タロット・カードとともに歩んだ半世紀――タロット・カードを日本に初めて輸入販売した会社の物語」 佐藤元泰
「日本におけるタロットの受容史――澁澤、種村と「タロウかタロットか」論争」夢然堂
「タロット占いが教えてきたもの――雑誌『マイバースデイ』から読み解く」橋迫瑞穂
[対談] 「タロットに流れるエネルギーの系譜」 鏡リュウジ+伊泉龍一

III Tarot in Art
「アレイスター・クロウリー、絵画、及びパレルモ・コレクションの諸作品」マルコ・パーシ 松田和也訳
「映画における「愚者」」エミリー・オーガー 伊泉龍一訳
「ケアラケアクア女神オラクルカード」小田まゆみ
[インタビュー] 「タロットを描く」天野喜孝
[図版構成]萩尾望都デザインタロットカード

IV Tarot in Action
「タロットの与えてくれるもの」暮れの酉
「カードとカードの間からこぼれ落ちるもの」ニシー
「「占い」の、内なる道徳律。」石井ゆかり
「思考ツールとしてのタロット」米光一成

V Tarot in Life
「『はじめてのタロット』を作った日々」荒井良二
「タロットカードと僕」蒼井翔太
「ロンドン・タロット・ツアー」ジェラルディン・バスキン 鏡リュウジ訳

VI Tarot in Perception
「占いと知覚」千葉雅也
【ブックガイド】個性派タロット本・ブックガイド MU BOOK information forum 出張版 星野太朗

編集後記 鏡リュウジ

すげー!

米光一成も「思考ツールとしてのタロット」というタイトルで、思考ツール、創作ツールとしてのタロットの使い方を、具体的な事例をあげながら紹介している。

電書「思考ツールとしてのタロット」の原型となったイベントまでの経緯と、その後、そして未来について。

ゲーム「BAROQUE」を作るときに、タロットを使って世界観をいかに構築したか。からはじめて、発想ツール、相談ツール、自分相談ツール、意識覚醒ツール、自己鍛錬ツール、世界ネットワーク構築ツールとして使ってきた過程と、その過程で生み出された作品「荒野へ The Game of Tarot」と「記憶交換ノ儀式」についてを記している。

ダイジェスト予告編的に、米光一成「思考ツールとしてのタロット」原稿を引用しよう。

「BAROQUE」は、異形を倒し、物語[ストーリー]の断片を集め、プレイヤーがそれを組み合わせ、それぞれの物語[ナラティブ]を作り上げるという仕組みのRPGだ。

架空のキャラクターである上級天使と同じく、タロットの魅力にハマってしまいタロットマニアになっていった。

タロットの大アルカナ22枚の象徴から、異形22体それぞれの特徴や攻撃方法、パラメーターを設定した。これが、きわめてうまくいった。

混沌であり一体化していた世界を、22の新しい方法で分節化し、類別し、関係づけたのだ。

神秘な力としてタロットを使うのではなく、「世界体系×ランダム」の装置としてタロットを使う。

ゲーム『BAROQUE』の細部のシステムやイベントを創るとき、何度もタロットカードを引いた。

節制が出たのだからと常套パタンを封印して考えた結果、イライザというキャラクターが「綺麗な水をください…」と語る奇妙なイベントが生まれた。

これはまずい。占いがしたいわけではないし、「めちゃくちゃ当たってる」「怖いぐらい当たってる」と言われると、こちらのほうが怖い。

これを日々繰り返していると、自然に22の視座を使いこなせるようになってくる。

師匠と魔獣がいるだけで会話が弾み、ひとりでは引き出されない心象・言葉・構想(イメージ、ワード、ビジョン)が出てくるのだ。

それが偶然であろうとも神秘を感じる体験をより効果的に活用するためには儀式的な段取りが必要だと考えている。そこでここ数年はゲームデザインの仕事に加えて、儀式デザインの仕事をはじめた。「記憶交換ノ儀式」は、6名で集まってお互いの記憶を交換する儀式だ。「荒野へ The Game of Tarot」という儀式とゲームと占いを融合したコンポーネントも開発した。

ユリイカ 詩と批評12月臨時増刊号「タロットの世界」、タロットやその周辺について興味がある人は必携です、ぜひ。

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