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結婚の挨拶(創作漫才)
A:そろそろ結婚したいな、と思ってるんですよ。
B:そういう相手がいるんですか?
A:いません。
B:相手がいないとできないと思いますけど。
A:すみません。
B:謝らなくてもいいですよ。
A:本当は結婚したいなんて、一ミリも思ってませんでした。
B:そうだったの?一ミリも?だったらなんで結婚したいなんて言ったんですか?
A:結婚したいっていう漫才のネタをよく見かけるから、それをやってみたかったんです。
B:ネタだとしたら、結婚したいっていう「てい」で良かったんじゃないですか?
A:漫才って「てい」とか許されてるんですか?
B:漫才なんて「てい」だらけですよ。
A:「ていっ!」
B:「ていっ!」じゃないんですよ。
A:ところで「てい」ってなんですか?
B:知らなかったんですね。
A:「てい」
B:「はい」みたいな言い方。「てい」は、実際にはそうではないけど、一時的にそういうことにして、みたいな意味だったかな。
A:なるほど。勉強になります。ありがとうございました。
B:まだ終わりませんよ。結婚したいっていう「てい」でいきましょう。
A:ネタとはいえ、嘘はつきたくないです。
B:嘘じゃなくて、「てい」です。
A:結婚したいのは嘘なんですけど、結婚の挨拶はしたいです。
B:結婚の挨拶?
A:息子さんを私にください、ってやつです。
B:それはやりたいんですね。でもあんまり女性がそれをやるというのは聞いたことがないですね。
A:男が女の両親に挨拶しに行くのなんて見飽きてますよ。
B:見飽きてるとかではない気がしますけど。
A:どうせ、男が女の両親に挨拶に行くのが普通だと思ってるんでしょ。
B:普通というか、イメージですかね。頑固な父親に男性が挨拶に行くっていう。
A:だめだ、完全に洗脳されてる。
B:洗脳って。
A:結婚の挨拶っていったら、頑固な父親に挨拶に行く男を思い浮かべるんですよね。
B:そうですね。
A:これを見ている人もそうなんですか?
B:分からないですけど、そうかもしれませんね。
A:時代は変化してるというのに、結婚の挨拶のイメージが変化してないのはおかしい。
B:確かに。言われてみればそうかもしれませんね。
A:イメチェンしましょう。
B:イメチェンですか。分かりましたよ。やりましょう。
A:結婚の挨拶の「てい」でやるんですね。
B:「てい」ってあんまり言わない方がいいと思います。
A:憧れの漫才コントができる。やったぜ。
B:それも言わなくていいです。
A:息子さんを私にください!
B:いきなり始まった。すごい切り替えの速さ。
A:「ていっ!」
B:「はいっ!」
A:息子さんを私にください!
B:お前のような、どこの馬の骨かも分からないようなやつに息子はやらん。
A:馬じゃないです。骨でもないです。そしてお前って言うな。やつって言うな。
B:それは確かに申し訳ない。どこの馬の骨かも分からないっていうのは、もののたとえで、あなたのような身元のはっきりしない人のことを言うんだよ。
A:なるほど。でも名前は名乗りません。素性も明かしません。でも息子さんはください!どうしてもください。何が何でもください。
B:圧がすごいな。ください、くださいって、息子は物じゃないんだ。やらん。
A:そういうあなただって、息子はやらんって、物みたいに言ってるじゃないですか。
B:くださいって言うから、やらんって言ってるだけで、物みたいに扱ってるわけじゃない。
A:はいはい。
B:はいはい、じゃないよ。
A:もう。何が気に入らないんですか?
B:名前も素性も明かさないような人と息子を結婚させたくないんだよ。
A:どこの馬の骨か分かったらいいんですか?
B:そうだな。そしてもう、どこの馬の骨か分からないって言葉、使いこなしてる?
A:覚えたらすぐ使いたいタイプです。
B:名前よりも先に、覚えたことをすぐ使うタイプということが分かりました。
A:好きなものは最後に食べるタイプです。あと、犬派、猫派などの派閥に属さないタイプです。お風呂は朝と夜、2回入るタイプです。あ、でも朝はシャワーだけのタイプです。あとは…
B:もういい、もういい。色々教えてくれてありがとう。ただ…名前はまだ教えてくれない。
A:名前って大事ですかね?
B:え?
A:名前で人を判断するタイプですか?
B:そういうタイプではない、というか名前で人は判断できない。
A:そうですよね?そうなんですよ。そういうことです。
B:どういうこと?というか、タイプタイプうるさい。
A:あなたも何回か言ってましたけどね。
B:タイプのことはもういいです。何が言いたいんですか?
A:実は…息子さんの名前も知らないまま結婚の挨拶に来てしまいました。
B:え?
A:そもそも息子さんを知りません。
B:え?
A:結婚の挨拶をしたくてきてしまいました。
B:怖い怖い怖い。終わり終わり。何これ?怖い話になったんですけど。
A:やっぱり嘘はつきたくないんでね。「てい」よくできたかな。
B:「ていっ!」
了
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