木の話9 二残一伐
小学生のころの夏休み、毎年和歌山のじいちゃんの家で過ごしていました。
川で泳いだり、魚を突いたり、海で泳いだり、田舎は大好きだったし、じいちゃんも大好きだったのですが、一つだけ嫌なことがありました。
じいちゃんは小さい山を持っていて、下枝を刈ったりする山の手入れにたまに連れて行かれるんですが、田舎の友だちと遊びたいボクはそれが嫌でした。
じいちゃんにすると、「山に連れてったるぞ!」と笑顔で言ってたので、我々孫たちが喜んでついて行ってると思ってたんでしょうね。ボクたちはそのへん大人だったし。
それで顔で笑って心で泣いて山について行ってたんですが、あるとき山でじいちゃん聞いてみました。「この手入れしている木っていつになったら使えるの?」と。
そしたら、「そやなぁ、お前たちが大きくなったら、いや、お前たちの子どもが大人になるころかなぁ…。そのときこの木で家建てれるぞ!」と笑顔で教えてくれました。
そのときボクは子どもながらにショックでした。なにがショックというと、ボクの子どもどころかボクがおとなになったときでさえじいちゃん生きてるかどうかわからない。
つまり、じいちゃんは自分のためじゃなくて、子孫というか、先の先のことを考えて仕事してるんやというのがわかって少なからず驚いたわけです。
じいちゃんすごいなぁと思ったし、そういう山の仕事、木の仕事がとても素敵な仕事だと感じました。今でも木の仕事をしているのは、やはりじいちゃんの影響が大きいと思います。
そんなじいちゃんに教えてもらった言葉でボクの好きな言葉に「二残一伐」(にざんいちばつ)という言葉があります。これは山の木を伐るときは全部切ってはいけない、3本あったら1本伐って2本残しなさい…という意味です。
そうすると残った木はまた大きくなります。そしてまた3本のうち1本だけ伐る。するとまた…。
サステナビリティという言葉が言われだして久しいですが、日本人ってずっと昔からそういうことを考えて行動し、それを伝えてきたんだなぁと思います。
そういいながら、自分は息子に伝えてなかったなぁ…。もうすっかり大人になったっちゃったけど、一緒に飲む機会があったら話してみよう。
こういうやり方をしてきたので、日本の森はずっと残っているんですね。
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