日本映画「洗骨」
今日ご紹介する映画は、みなさんご存知のガレッジセールのゴリこと、照屋年之監督作品「洗骨」。はじめに言わせてください。この映画、もう、よすぎて、やばい。
まず、みなさんも思ってるんじゃないかなと思うんですけど、ガレッジセールのゴリって、最高の芸人というか、学生の頃にワンナイとか見てて大好きだったんですけど、その芸人のゴリが撮る映画がなんぼのもんじゃい、と。この10年ほど短編映画を撮り続けていたのも全然知らなかったんですけど、でもね、もうこの映画については、侮ってはいけません。ほんとにね、日本の名監督として、もっといろんな映画撮ってほしい、もっといろんな映画がみたい、そう強く思う映画になってます。
さて、洗骨っていうのはですね、沖縄の離島にはまだ残る風習なんですが、風葬や土葬をした故人を、4年後にもう一度その遺体を掘り出してきて、家族や縁の深い人の手によって水や酒で文字通り骨を洗うと。骨を洗うまでの遺体は穢れているものとしての存在だったのが、洗骨することで先祖と同じ墓に入れる、先祖化すると、そういう風習なんですね。この映画はその風習を取り巻く沖縄の家族の物語なんです。
この映画すごいのは、日本の、わたしたちのタブーに挑戦しているところです。僕はよく韓国映画をみるんですが、あぁ韓国映画って面白いなぁと思う理由は簡単にタブーに挑戦して、やすやすと想像を超えてくるところなんです。タブーに挑戦して、壊すことで、新しい景色とか世界をみせてくれるから僕は韓国映画って面白いと思ってるんです。
「洗骨」もね、タブーに挑戦してます。僕の中ではこの映画の中に二つのタブーがあると思ってるんですが、ひとつはすでに説明した「洗骨」そのものなんです。僕らの世界って死ぬこととか、大きく言えば自然、虫とか獣とかを排除してできた世界なんですよね。まして埋めた死体をもう一度開けてきて、触る、洗うなんて絶対にしない。その描写を映画表現という枠の中で、もう見事に見せてくれている。そこがもう韓国映画と同じように、面白い仕組みとしてタブーに挑戦しているんですね。もうひとつのタブーについては、ぜひ映画を観て、あれかなこれかなって考えていただきたいんですけど。
さらにこの映画のいいところなんですけど、沖縄って、もちろん日本なんですけど、所謂日本の文化とはやっぱり違うところがあって、その特有の文化が、日本なんだけど異国の空気というか、僕はそこがものすごく好きなんです。でも、洗骨という風習もそうですけど、沖縄の人じゃないとわかりにくいというか、簡単には理解できない部分もあるじゃないですか。そこでね、この映画すごいんですけど、鈴木Q太郎さんが演者として出てまして、この方が僕たち沖縄人でない観客のために居てくれるんですよ。観客目線で聞きたいことをすっと聞いてくれて、ものすごく理解しやすい構図になってるんですね。ここもまたすごいなぁと。キャラクターがキャラクターとして立ちながら、それぞれがものすごく効果的に役割を演じるという。もちろん、他のキャストにもそういうところがあるんですけど、まったく嫌味なく、自然にそういうことをこの映画はやっちゃうんですね。
何度も言いますけど、映画のストーリー展開、音楽の使い方、この映画もう最高ですよ。ゴリといえばコント師というか、もちろんお笑いでやってきた人ですから、さらに笑いが絶妙に入っている。白けるようなものじゃない、しっかりユーモアとして入ってるんですね。
泣けるし、笑えるし、俳優さんは上手いし。「なんだこの映画!!!」ですよ。
僕の不勉強もありますが、最近の日本の映画でこんなにいい映画があるんだと、うれしくなっちゃいまして。実際泣いたんですけど、ほんとに泣きそうになりました。
この映画、知らないのは本当にもったいない。照屋監督の映画もっと観たいなぁ。
「洗骨」(照屋年之監督、2019年公開、日本映画)