家永真幸さんとウェビナー(12/3)やります。
今月、文春新書から『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』を刊行された家永真幸さんと、文春ウェビナーで対談します。12月3日(日)13:00 より。
家永さんとは、大学院でいくつか授業が同じでした。私がまだ歴史学者をしていた2012年に、福嶋亮大さんを交えて鼎談したこともあります。
で、むろん同書を読んで対談に臨むわけですけど、1冊の新書で台湾の通史を学べる書籍はきわめて貴重で、見落としていなければ(家永さんの先生が書いた)若林正丈『台湾 変容し躊躇するアイデンティティ』以来ではないかと感じました。そちらはちくま新書で、2001年の本です。
後述する通り、自分の考える家永さんの本の魅力は違う点にあるのですが、まずは前提として、いわゆる「民主化以降の台湾」の概略を同書から年表にします(陳・馬・蔡のいずれも「再選」された選挙は省略)。
若林先生(のゼミで、家永さんと一緒だった)の新書が出た2001年は、まだ「冷戦終焉期の民主化」の成功例としての台湾という位置づけが、広く共有されていた時代でした。もちろん若林著が単純な進歩史観で書かれているということはないのですが、全体としては「なぜ民主化に成功し得たのか」という観点が、強く脈打っていることは事実だと思います。
逆に2016年に米国でのトランプ当選を見た後の現在は、「民主主義であるからといって、それは『成功』なのか?」が疑わしくなった時代でしょう。なので家永さんの描く台湾の戦後史は、むしろ過去から現在にまで至る「亀裂」の数々を強調しているように読めました。
台湾に生きる「中国人」で行くのか、中国と切り離された「台湾人」になるのか。国民党が権威主義だった時代の圧政をどう捉えるか。その国民党に対抗する際、大陸の中国共産党の論理に乗るのか否か。日本による植民地統治の記憶はどう評価するか。……よく知られた「本省人 vs 外省人」以外にも、無限にアイデンティティを分かつ争点を抱える台湾。
むしろ民主化それ自体というよりは、歴史的に分断されてきた社会における「和解」や「寛容・共存」の方に軸足があるのが、家永さんの台湾通史の特徴ではと感じているので、そのあたりを伺ってみようと思います。多くの方にご視聴いただければ幸いです。
P.S.
やはり文藝春秋から11月に出たムック『2024年の論点100』でもご一緒しており、家永さんは来年の台湾総統選の話、私は今年のスタジオジブリとキムタクの話をしています。こちらもよければ。