【日常】元気がなさすぎて餅を買った話

税込み価格217円、ずっと気になっていた餅を買った
餅部分が塩風味だなんて好みすぎるし絶対おいしい
勝手に抱いた確信と膨らむ期待がついに弾けた半年後
見つめ続けるばかりだったそれをようやくカゴに入れたのだ

この日の自分が激しく落ち込んでいなけりゃ我慢してた
糖質制限の鎖を引き千切るほどしょんぼりしてなけりゃ

剥がれ落ちた平静をペタペタ塗り込めるには餅が一番
一パック四つ入りだけど問題ない
和菓子も冷凍できるよと友達が教えてくれたし、糖質制限の楔をも引き抜くしょんぼりパワーで無敵だから
自制を振り切り無法地帯と化した荒野で餅を食らう
究極に弱ると普段は避けるドデカい溝だって飛び越えられる現象に、今の自分は弱ってるのか強まってるのか何なのか
猫を噛む窮鼠に共感しながらそれはそれとして認めざるを得ない

これは一つ食べれば気が済む類のもので四つはちょっと………………

すべては膨らみすぎた期待のなせる業
イマイチ感を確認するために二つ食べ、確認したから後は冷凍という算段
粛々とラップに包もうとして餅が落ちた包まれてない方の面を床につけて
瞬時に発動した三秒ルールに則り三つめも食べる
本当は一つで良かった餅を二つで打ち止めるつもりだった餅を三つ

一つだけラップに包まれた餅が急に孤独を纏いだしてやるせない
お洒落して待ち合わせ場所に向かったら誰も来なかったみたいな
荒れた大地を改造バイクで走り抜ける強気な世紀末ビジョンの影もなく、所詮はしょんぼりの手のひらの上だったらしい
それでも確実に残した爪痕が存在を主張する
自由な荒野が確かにあったことを後引く満腹感が知らしめるなか、動悸、血圧低下、徐脈が入り乱れて拍車をかけた

それにしてもだ
もっと早く食べていたらスーパーに行くたび闘う我慢をひとつ減らせたのに
学生時代、国試受験を控えた自分らに先生が言っていたっけ
向き合う対象を必要以上に大きくしないようにね
何かと手のかかる我が身の運用についてもそれはそう
代償込みだろうがたまには勢いよくエンジンを唸らせることは必要だし
遠目に見守りすぎて高じた期待は片思いみたいに拗れて危険だってこと