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沈みたい夜には

悲しい時には悲しい音楽を聴くといいらしいーーそんな記事を数年前に書いたことがある。今またそんな気分になっている。人の声を聞きたくないし、誰とも喋りたくない。けれど、子供がいるからそんなわけにもいかない。日中は娘を連れて買い物し、カフェに行き、店員さんとにこやかに会話した。でも、心の中に澱のようなものが溜まっているのを感じる。疲れているんだと思う。夏休みが終わって、娘が中学校に入学して最初の1週間が無事過ぎた。イギリスはもう秋の気配で今も外は雨だ。夕方からずっとYouTubeでジャズを聴いている。あまり詳しくないから、YouTubeが見繕ってくれたものを素直に流している。

哀愁たっぷりでいいなと思ったのは、チェット・ベイカーの「Almost Blue」。最後の方で歌が入る。私はYouTubeのコメント欄を読むのが結構好きなんだけど、こんな詩的なことを書いている人がいた。「Sadness isn’t looking at gray skies it seems, but remembering they were once blue. (悲しみっていうのは灰色の空を眺めることじゃなくて、空が青かった昔を思い出すことなんだろう)」

「Almost Blue」で沈みきった後にビル・エヴァンスの「Waltz For Debby」を聴くと、その清らかさになんだか心が浄化される気がする。涙は出なかったけど、泣きたいような気持ちになった。

私の一人時間は娘が就寝してからが本番。安ワインをお供にしばらく沈んでいようと思う。


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吉隠ゆき (Yuki Yonabari)
ありがたくいただきます。