「紙の国(4)」 はらまさかず
ともちゃんは、夜になっても紙の国の女の子のことが忘れられないようです。
「女の子、今ごろなにしてるかなあ」
窓の外をながめながら、ともちゃんがいいました。
「紙の国は、今ごろ、うすーい黒い紙におおわれてるよ。紙の月がやさしく町をてらして、女の子は、もうすぐねむるころだろうね」
お父さんがいいます。
ともちゃんは、おふとんに入り、もう少しでねむりそうです。
「女の子はねむる前に、手紙を書きました。そして、それを紙ひこうきにして飛ばします。紙ひこうきはぐんぐん飛んで、窓から入ってきました」
お父さんがそういうと、
「お父さん、窓あけといて」
ともちゃんが、いいました。
「だめだよ、さむいもん」
「ちょっとで、いいから」
お父さんは、紙ひこうきが通れるくらい、ちょっと窓をあけました。
「お手紙、飛んでくるかなあ」
「どうかなあ」
「ねえ、お父さん、このお話あげるけどさあ、あとでまた読めるように、紙に書いてよ」
「うん、いいよ。」
夜は、とても静かです。
ともちゃんは、ねてしまいました。
お父さんは、窓のむこうから、紙ひこうきがとんでくるような気がしました。