「ちいさなトラック」 木村研
(とびら)
ちいさなトラックは、おおきな トラックのように、たくさんの にもつを はこべるように なりたいなあ と、おもって いました。
(1)
あるひ、ちいさなトラックにも ひっこしの こえが かかりました。
(2)
ちいさなトラックは、おおよろこび。
はりきって ひっこしさきの うちに いきました。
(3)
それなのに、おおきな トラックが、
「じゃま じゃま。おまえさんに はこべるようなものは、なんにも ないよ」
と、いいました。
(4)
あっちに いっても、こっちに いっても、
「ほら ほら、あぶないよ。あっちに いった いった」
と、おおきな トラックが いいます。
(5)
ちいさなトラックは、がっかり。
(6)
しょんぼり していると、うちの なかから わかい おかあさんが でてきて、
「よかった。まっていたのよ」
と、いいました。
(7)
わかい おかあさんは、あかちゃんと いっしょに ちいさなトラックに のって、
「あなたには、いちばん たいせつなものを はこんで もらいたかったのよ」
と、いいました。
(8)
「いちばん たいせつなもの を!」
ちいさなトラックは、うれしくなりました。
(9)
ひっこしが はじまると、ちいさなトラックは、げんきよく、いちばん せんとうを はしります。
(10)
ゆっくり ゆっくり、あんぜん うんてんで はしります。
(11)
ひっこしが おわりました。
おおきな トラックが、
「がんばった なあ」
「ごくろうさん」
と、いいました。
ちいさいトラックは、うれしく なりました。
(12)
トラックたちが かえるとき、にかいの ベランダから、わかい おかあさんと あかちゃんが てを ふっていました。
(よむよんでより)
これは絵本用に場面が区切られた作品です。読み聞かせ用としてもお使いいただけますし、絵をつけて絵本や紙芝居としてもお使いいただけます。