「幼稚園バスはまんいんです」 木村研

 山の幼稚園がはじまりました。
「おはよう」
 うさぎのおねえさんが、こりすのガリちゃんをむかえにきてくれました。
「ありがとう」
 ガリちゃんのお母さんは、
「よろしくお願いします」
と、うさぎのおねえさんにいいました。
 それなのに、ガリちゃんは、お母さんの手をはなしません。ガリちゃんは、はずかしがりやさんなんです。
 お母さんが困っていると、
「おまたせしました。幼稚園バスでーす」
と、きつねのおにいさんが走ってきました。
 おにいさんは、両手でロープをかかえて、うちの前でとまりました。
 うさぎのおねえさんには、すぐわかりました。幼稚園で遊んでいる電車ごっこです。
 うさぎのおねえさんは、丸くなったおにいさんのロープを持って、
「ガリちゃんも、早くのって」
と、いいました。
 ガリちゃんが二人の間に入ると、
「発車しまーす」
と、幼稚園バスが走り出しました。
「いってらっしゃい」
 お母さんが、ガリちゃんに手をふります。

 幼稚園バスが森の中を走って行くと、
「おーい。待ってくれー」
と、大きなくまが走ってきました。
「くま先生」
「おはよう」
 おにいさんとおねえさんがあいさつをすると、くま先生は、
「ぼくものせてくれよ」
と、いいました。
「だめだよ。もう、のれないよ」
「幼稚園バスは、三人でまんいんよ」
おにいさんとおねえさんは、口々にいいました。
 するとくま先生は、ガリちゃんを、ひょいと肩のせて、
「これならだいじょうぶ」
と、バスにのってきました。
 しかたがありません。
 おにいさんは、
「二階だての幼稚園バス、発車しまーす」
と、いいました。
 バスが幼稚園につくと、園長先生たちが、
「おはよう」
「おはよう」
と、ガリちゃんをおむかえしてくれます。
 だから、ガリちゃんも、
「おはよう」
と、大きなこえでいいました。

(作者のことば)
山の幼稚園は、子どもたちだけで幼稚園にいくんですよ。みんなも、早く幼稚園や学校に行けるようになるといいですね。

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