「しあわせ」 はらまさかず
クマが森を歩いていると、ハチの巣が落ちていました。
どうせからっぽだろうとのぞいてみると、ハチミツがつまっていました。
クマは飛びあがって喜びました。
でも、一つ疑問がわいてきました。
それは、こんなふうによろこんでいる自分は、幸せなのだろうかということです。
よく考えてみると、クマは自分がそれほど幸せではないように思えてきました。
だからといって不幸せだというのではなく、つまり、ハチミツのつまったハチの巣をみつけても、みつけなくても、自分の幸せには、あまり関係がないように思えたのです。
そんなことを考えながら、クマはハチミツをなめました。それは、最高においしいハチミツでした。クマはうれしくて、スキップをしました。
しかし、また、疑問がわいてきました。
それは、こんなふうにうれしくて仕方がない自分は、一体、幸せなのかどうかという疑問です。それは、不幸せだというのではなくて、つまり、このハチミツを食べてしまったあとも、自分は幸せだろうかという疑問です。
よく考えてみると、クマは、このハチミツを食べ終わった後には、不幸せを感じてしまうような気がしました。
クマは、ハチミツを残したまま、ハチの巣をもとにもどしておきました。
クマは、今でも、おなかがすいたときに、あのハチの巣のことを思い出します。