「ぼく」 はらまさかず

 「お母さんの絵をかいてみましょう」
 先生が、いいました。
 ハリネズミのトンちゃんは、いっしょうけんめいかきました。でも、できあがった絵をみて、先生たちはびっくりしました。お母さんのおなかに、黒いあながぽっかりとあいていたのです。
 トンちゃんは、うまくかけたと自信満々でしたが、みんながびっくりしているので、悲しくなってしまいました。
 
 その日、先生は、トンちゃんをむかえにきたお母さんにきいてみました。トンちゃんに最近、なにか困ったことがあるんじゃないかって。
 そしたら、お母さんは、
 「ああ」
といって、
 「トンちゃーん」
と、よびました。
 トンちゃんは走ってきて、お母さんのむねにジャーンプ。そして、ふたりで、ぎゅーっとしました。
 「ほら」
といって、お母さんは先生に見せました。
 それは、本当にトンちゃんがかいた絵にそっくり。お母さんのおなかに黒いあながあいているように見えました。
 黒いあなに見えたのは、しがみつくトンちゃんだったんですね。

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