私のなかのマーロン・ブランド
本日2月27日、確定申告を終わらせることを目標に先週から嘆いてはやめ、嘆いては入力しを繰り返してきた。「嘆く」。この動詞を体感するとき、私のなかのマーロン・ブランドが「Hey, Stella!」とわめく。
「欲望という名の電車」でマーロン・ブランド演じるスタンリーが彷徨するシーンだ。このなんてことない、ただ妻ステラの名を悲嘆にくれて絶叫してるだけのセリフなのだが、なんと「アメリカ映画の名セリフベスト100」にランクインされている。
海外ドラマを観ていると、しょっちゅうこのシーンをパロディで扱う場面に遭遇する。「ビッグバンセオリー」でも観た気がするので、ずいぶん近年の作品でもというか、近代においても市民権を得ている愛されシーンなのだと想像できる。しかし日本人のメンタリティからすると、なんでかくもこの絶叫部分がフィーチャーされるのかはわからず、妙にお国柄みたいなものを感じるところだったりする。
この「アメリカ映画の名セリフベスト100」、ウィキペディアが親切にも100個抜き出してくれているのだ。私が実際に記憶にもあって好きなのはこちら。
●ダーティー・ハリー Go ahead, make my day.
(「やれよ、楽しませてくれ」)
●サンセット大通り All right, Mr. DeMille, I'm ready for my close-up.
(「デミル監督、クローズアップを」)
●市民ケーン Rosebud.
(「バラのつぼみ」)
●007 The name is Bond. James Bond.
(「ボンド。ジェームズ・ボンドです。」)
A martini. Shaken, not stirred.
(「マティーニを。ステアじゃなくシェイクで」)
●ウォール街 Greed, for lack of a better word, is good.
(「言っちゃ悪いが、強欲は善だ」)
知っているものはもっとあるけれど、頭に残っていて好きなのはこれくらい。しかし、
Here's Johnny!
(「お客様だよ!」)
これは「シャイニング」、あのジャック・ニコルソンのこわ~い映画のセリフなのだが、めちゃくちゃインプットされている。しかも英語の「Here's Johnny!」の方で。理由があって、これ、観るたびに日本語訳が違うのだ。忘れもしない、高校時代にビデオで観たときの字幕は「おコンバンハ!」だった。ひどすぎない…?って思ったので爾来よく覚えていた。しかし、数年前にテレビで観たときは上記の「お客様だよ!」になっていてずっこけた。そして調べてみると、人気深夜番組に実際に出演していた司会者ジョニーさんの、登場時の決まり文句だったという。日本語にするにあたって、苦肉の策を講じていたんだなぁ…。
このランキング中、私がもっとも好きなのは
You can't handle the truth!
(「おまえに真実は分からん!」)
えー奇しくもまたまた演者は、ジャック・ニコルソン!「A few Good Men」の、ニコルソン演じるネイサン・R・ジェセップ大佐が放つセリフだ。
そっか。ここまで書いてきたやっと「ステラ!」が愛される理由がわかった気がする。セリフじゃないんだな、演者とシーンの象徴なんだ。「Here's Johnny!」も「You can't handle the truth!」も、ニコルソンの顔芸…じゃないや、癖の強すぎる迫真の演技で強烈な印象を残すシーンになっている。そう、きっと正しくはこのランキング名称は「名シーンのなかで言われたセリフ」の方が本来の意味合いに近そう。
冒頭の「Hey, Stella!」も、野生的な男臭さの匂いたつような若きマーロン・ブランドがそのたぎる生命力のままに彷徨するからこそ強く印象に残ってしまう。
さ、そろそろ確定申告作業に戻ります…