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入国審査
水曜日。ひと冬ずっと見張っているように言われ、仕方なく羽毛布団を巻きつけ浜辺に腰を下ろしていると、海面から猛烈に立ち昇る朝霧の中を海賊船がやってくる。
拡声器のスイッチを入れ「観光ですか仕事ですか」と訊くと砲弾を撃ち込んできたので、マニュアル通りにカノンを爆音で再生した。
電子音のメロディーが途切れ、「お風呂が沸きました」という明るい声が凪いだ浦に響き渡る。歓声が遠くに上がり、船の甲板から気嵐へ、いくつもの人影が飛び込んでは消えてゆく。
け‐あらし【毛嵐】
海面から立ち上る水蒸気が、陸上からの冷たい空気に触れて発生する霧。川・湖の場合にもいう。厳冬期の北日本に多い。
※漢字は、「気嵐」「毛嵐」どちらでもいいみたいです。
先週江ノ島(神奈川県)に行ったときに「けあらし」という言葉を初めて知り、その現象も含めて素敵だなーと思ったのでした。
江ノ島周辺の海でも、けあらしが立つことがあるのだそうです。
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