![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142216430/rectangle_large_type_2_f22ea454e69d6a77804abcd4273c8173.png?width=1200)
エキゾチックブーケ
水曜日。新婦からジャスミンの花束を向けられ「いい匂いなの」と言われたけれど、カレーを食べ始めたところなので花の匂いを嗅ぎたくない。
ねっとりと甘たるくて生温い、熟れた死骸みたいなジャスミンの臭気が入り込まないよう息を止めて「おかまいなく」にっこりと告げると「遠慮しないで」同じように微笑んだ新婦に小鼻を摘まれ、するりと上方向にスライドされ顔面から外された。
花束の中央に据え置かれた自分の鼻を眺めながら、カレーをひとくち食べてみる。ジャスミンの激臭にまみれたターメリックの、クミンの、コリアンダーの、華やかな香りが閃光になって、鼻の穴の中でちかちかと光っている。