石庭の金魚
水曜日。嵐山の枯山水がうつくしいので縁側からダイブすると、顔だけを砂利から突き出して、おびただしい数の和金が埋まっている。
つまんでゆっくり引いてみると、こまかな砂利が和金の表皮でさりさりと転めく振動が指先に伝わってきた。尾鰭が何かに閊えたのかもしれない、うっとりしながら引きずり出すさなか地中から引っ張り返されるような一瞬の抵抗を感じて、思わず容赦を無くした指が一息に和金を抜き上げる。
ふっくらとした魚体が傷ひとつなく艶めいているので、嬉しい気持ちで日にかざす。ダイブで轢いてしまった和金たちが、わたしの胴体の下で、ぐねぐねと身動いでいる。
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