ロバと踊れない盆踊り
金曜日。がむしゃらに焼きそばを食みながら「麺がもちもち」と嬉しそうにいななくロバの歯という歯すべてに、びっしりと青のりがついている。
盆踊りが始まろうとしている境内のすみで、割り箸でひとくち分の麺をつかみあげたまま、さっき買ったばかりの焼きそばの食べ方をとつぜん忘れてしまったような気持ちでロバの前に立ち尽くしていると、アルミ製のやぐらの上で和太鼓が大きく打たれた。
マヨネーズのたっぷりとかかった箇所を大切そうによけて食べ進めるロバに「しあわせ?」思わず言葉をこぼしてハッとする。何かを見透かしたみたいに、和太鼓がひときわ、強く打たれる。