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365歩の牛歩

皆さんは、好きだったのに潰れてしまったお店はありますか?




こう書いていて、私の頭に思い浮かんでいるお店は、2店あります。





1つは、"コロちゃんのコロッケ屋!!"です(笑)。


運営会社が、2007年に経営破綻するまでは、全国にチェーンを拡大し、
安くて美味しいコロッケを販売していましたが、
現在では、八王子に2店舗を構えているのみだそうです。





中学~高校時代は、私の家の近所に2店舗あり、
なけなしの小遣いを叩いて、50円のコロッケを買っては、
寒い日にハフハフ言いながら食べるのが、格別な幸せでした。



大学に入った年に、コロちゃんが潰れたというニュースを受け、
資本主義社会の残酷さを(笑)、身を以って味わったとともに、
"潰しちゃいけない会社も、世の中にはあるのではないか?"という、
そんな強い疑問を抱いたことを、今でも覚えています。



定番の、"コロちゃんコロッケ"はもちろんのこと、
ジューシーな肉汁たっぷりの"コロメンチ"、
甘くて濃厚、摩訶不思議な食感の"ミルクコロッケ"など、
店舗の前に立つ度、どれを買おうか、悩んでしょうがなかったです。



それらの極上コロッケが、たった50円で買えるというから、
当時の、貧乏中高生の私にとっては、夢のようなことでした。






好きだったけど、潰れてしまったお店。




もう1店は、本当にごく最近のこと。




それは、上野にあった牛丼の人気店、"牛の力"です。




2013年に放送された、テレビ東京のドラマ、
"めしばな刑事タチバナ"でも紹介された、言わずと知れた名店です。



(paraviにご登録の方は是非、第7話をご覧下さい)




特製醤油を使ったつゆで、じっくりと煮込まれた国産牛が、
大きな丼の上に、これでもかと贅沢に盛られた、至極の牛丼。



通常の牛丼や、唐辛子が効いた"赤牛丼"などもありますが、
私のイチオシは、何と言っても"白牛丼"です。

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ふんだんに乗せられた牛肉の上には、半熟卵と無塩バター。



彼らの織りなす絶妙なハーモニーは、何度食べに行っても、
また食べたくなる、実にまろやかで、幸せな味でした。






思い起こせば、去年の2月に、2社目を休職したとき。





そして、今年の8月に、3社目を休職したとき。




その時から、この近くの心療内科に通う私にとっては、
診察とカウンセリングを受けた後、牛の力に立ち寄り(笑)、
白牛丼を食べて、精を着けるというのが恒例行事でした。




医師の診察よりも、心理士のカウンセリングよりも、
真に、休職中の私を、心の底から慰めてくれたのは、
牛の力の白牛丼だった(笑)と言っても、過言ではありません。






人生に躓いて、自分自身を見つめ直すような時間。



社会の慌ただしさに背を向け、一人、足踏みしていた自分。



去年の8か月と、今年の4か月。



合計すると、実に丸一年もの間、私は牛歩をしていました(笑)。






これからの人生、どうするのか。


この不況下で、転職先は、果たして見つかるのか。


奥さんは、この状況をどう受け止めているのか。


次の職場でも、同じ結果になってしまうのではないか。






カウンセリングの後は、色んな不安が頭の中を去来しましたが、
まだお店が込みだす前の11時半過ぎに、牛の力の席に座ると、
流れてくる80~90年代頃の懐メロに、思わず心が安らぎます(笑)。



数々の名曲を聴きながら、白牛丼をかっ喰らいましたが、
個人的に、お店で聴いた中で印象に残っているのは、
福耳の「星のかけらを探しに行こう」です(笑)。




1999年に発売されてから、今もなお愛され続ける名曲。




杏子さんのハスキーボイスが良くて(笑)、今も時々、聴き返します。






そんな素敵な思い出の多い、牛の力でしたが、
今年の10月末を以って、残念ながら、店じまいとなりました。




正直、今年の8月~10月に立ち寄った際、
このご時世の中、席を1つずつ空けて座るようになり、
実質、席数を半分とされてしまっている状況を見て、
経営は大丈夫なのかな、と心配はしていたのですが、
やはり、こういう結果となってしまった次第です。





2度に渡る休職期間の私を、いつも支えてくれた牛の力。





めしばな刑事タチバナで観たときには、まさか、
自分にとって、ここまで重要な店になるとは(笑)、
夢にも思いませんでしたが、本当にお世話になりました。






コロちゃんコロッケが潰れ、牛の力が潰れ…。




「お前は牛肉を食うな」と(笑)言われているような気分ですが、
改めて、自分が生きてきたこの30年余り、
日本はずっと不景気の中にいる、ということを実感しています。




昔、初めて吉野家で牛丼の並を頼んだ時、
出てきた丼を見たら、ご飯の上には、玉ねぎ7割、肉3割(笑)。



申し訳程度の薄い肉が、3~4枚位ペロンと乗っていて(笑)、
"日本、こんなに不景気なのか"と思い知らされた記憶があります。






そうした経験もあっての、今回の牛の力だったので、
牛丼を食べて、こんなに充実した気分になれた僅かな期間、
本当に、感謝以外の気持ちがありません。






お店の中だけは景気良く、美味しい牛丼をお腹一杯、
いつも提供してくれた、スタッフの皆様、
本当に、本当に、ありがとうございました。





また、どこかでお会いできる日を、心待ちにしています。

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yomogida4
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