【カオリ】いつかの夢
早めに気付いた夢の中
素っ裸で
ボクは
荒れ果てたような新緑の草生い茂る
ひたすら広い
原っぱに立ち尽くす
幼きボクが友と遊び場にしていた
あの場所によく似てる
ボクが大好きな
あの居場所
漠然とした頭は
誰かに会うための確約を守るためだと
鐘を鳴らす
ならば自分から会いに行こうか
思案しても
すれ違いになるのに怯えるボクさ
立ち尽くすその場所の
どの方向からキミはやって来るのだろう
キミを想うほどに青く染まる地平線
景色の端の端まで
目を凝らせ
細めた目から歪む景色の先を見ろ
青草が伸びてゆく
青く青く長く
伸びてゆく
感じる気配
目を凝らし
探しては
鼓動がする方へ視線を移せ
色味を増す景色に
揺れる人影を見つけ
早くなる鼓動を知らんぷり
耐えれぬ鼓動に知らんぷり
細めた目
一瞬
閉じ切るボクの目蓋
人影は
見当たらない
もう遅い
やっと気付く
半身に会える夢だった
気折し視線を落とすだけ
ボクの足元
まっすぐそこに
ボクを見つめる純真な子
ボクと違い
まばたきなんてする間のない
ぶれない視軸
ひたすら
まっすぐ
じっと
見ている
それが
怒っているようで
悲しそう
何も言わないのに
“どうして
会いに来てくれないの?”
訴えかけられているようで
苦しいな
なんて声をかけようか
抱きしめてもいいだろうか
考えるほど
動けなくて
謝ろう
動き出すボクを待たず
キミは
景色の草みたいに伸びてゆく
ボクの腰ぐらいだった その体
伸びて
伸びては
ついに
ボクと同じ高さで視線が合うね
それすらも一瞬で過ぎてゆく
キミの背丈の終わりを見定めよう
ハッとした
見慣れた天井 木目の天井
キミの名もわからずに
夢は夢のまま
ゆっくりと体を起こし
襲われる喪失感
ボロボロと
涙が止まらない
「会いたい」「会わなくちゃ」
いつの間にか
つぶやく言葉
何もわからないボクだけど
ボクだから
キミのいる場所を
当てられちゃいそうな
そんな勢いを頼りに立ち上がる
地図広げ
目指すは青く見える地平線
行き方も持ち物も知識だって
何もかもが足りないと気付いても
キミに会いたい欲が勝る
そこに遠慮がちな足音響く
母の顔色
歪な自分を思い出す
中途半端に
現実を見たボク
さぼりがちな学び舎に
今日こそはと約束したのは随分前
キミに会いに行くのなら
きっとボクは帰らない
目の前の色は
ボクの知らない所で
真っ青に
自惚れだと走り出そうか
中途半端に
現実を見たボク
ああ
どこかで
泣きもせず
ひたすら悲しんでいる
キミの
幻影が
うっすら残る
せめて
せめて
その幻影を抱きしめよう
謝りながら
「おめでとう」
口が動く
そうか
今日はキミの誕生日
本当なんてわからない
愛してる
キミが
キミのまま
生き続けていられますようにと
願いを込めよう
ボクにとって
キミの倍ほどの人生を生きた
春の朝
キミは今
どんな想いを抱え
どんな人達に囲まれて
どんな言葉を
投げかけられていたのだろう
キミもボクの幻影を
見ただろうか
そんな夢を
けなしてくれたっていいんだよ
ただ
君に
伝えたい
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