ムーミンの国を旅する話~片桐はいり『わたしのマトカ』
やすこさんへ
フィンランド、いいよねえ。森と湖の国。『自然享受権』のある国。サンタクロースの国。仕事が4時に終わる国。男女平等の国。オシャレでシンプルな家具や食器のデザイン。白夜。オーロラ。そしてムーミン。
やすこさんもご存じの通り私はムーミンが大好き。キャラクターグッズも好きだけど、何と言ってもトーベ・ヤンソンの書いたムーミンシリーズが本当に好き。ということで今回はムーミンの本について書こう、と意気込んだのですが、実はちょっと挫折してしまいました。好きなものについて書くのが難しいこともあるんだね。
そのかわりと言ってはなんですが、近年のフィンランドブームの火付け役となった映画『かもめ食堂』のロケやその後の旅について、女優の片桐はいりさんが書いたエッセイ『私のマトカ』を紹介したいと思います。
はいりさんはとにかく食いしん坊で好奇心旺盛。なおかつタフな人、というのが読後の印象。
「タイヤのゴムみたいな味」のフィンランドのお菓子サルミアッキや、野性味の強いトナカイの肉に甘いジャムをたっぷりつけて食べるというフィンランド流の食べ方にも積極的にチャレンジするし、最初に憶えたフィンランド語は市場で買い物をするための「サーンコ・タシタ・リタラ(これを1リットルください)」。そもそもどの国に行っても挨拶の言葉より先に「ビールください」とか「おいしい」といった食べ物に関する言葉から覚えるそうで、異文化を胃袋から吸収する人って感じ。
乗り方もわからないまま路面電車で町のあちこちに出かけたり、ホテルの窓の外から聞こえる「ずんずん」音に導かれ、ポケットに財布だけ突っ込んでクラブに出かけて現地の酔っ払いに絡まれたり、ファームステイに出かけた農場で、泥だらけになりながら雨上がりの森をバイクで疾走したり、素っ裸でサウナに閉じ込められたり。
困ったことが起こってもそれもまた旅の醍醐味とばかり、言葉の通じない異国でも怖がらずに、身一つでどこにでも出かけていくはいりさんがとにかく自由で楽しそうで、読んでいるこちらも楽しくなる。いいなあ。こういう人を旅の達人って言うんだろうなあ。
ちなみにタイトルの『マトカ』はフィンランド語で『旅』の意味なんだって。
読んでいたらフィンランドに行きたくなっちゃった。コロナもようやく落ち着いたし、いつか、なんて言ってないで、思い切って出かけなくちゃね。
2023年12月22日
かおりより