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50代、地味だけど心地良い暮らしの話〜藤野千夜『団地のふたり』

やすこさんへ

『やっぱり猫が好き』私も大好きでした!恩田三姉妹のなんてことない、でも時々少し奇妙な生活が楽しくて、ずーっと続いてくれたらいいのにと思っていたよ。

先週おすすめしてもらった『聡乃学習』からの小林聡美さん繋がりで、私からは『団地のふたり』をおすすめ。

なんで聡美さん繋がりかというと、小林聡美さんと小泉今日子さん主演でドラマ化されたから。古い団地に暮らす50代女性2人のゆるーい日常が、何とも心地良いんです。

同じ団地で生まれ育った幼馴染で、お互いのいいところも悪いところも知り尽くしているなっちゃんとノエチ。それぞれ家を出ても交流は途切れず、一度は結婚や同棲もしたけれど、今は2人とも団地の実家に出戻ってきて、始終顔を合わせる間柄。
団地は老朽化が進んで周りはお年寄りばかりだし、仕事もパッとしないし、華やいだこともない生活なんだけど、それでもなんだか楽しそう。

なっちゃんがお取り寄せした野菜をノエチと両親にお裾分けしたり、今は一人で暮らしてるなっちゃんの家で毎晩のように一緒にご飯を食べて、食後はベランダでコーヒーを飲んだり、近所のおばちゃんちの網戸の張替えをやってあげたり、馴染みの喫茶店『まつ』(名前が渋い)でホットケーキを食べたり。


50代って身体の不調が出てきたり、親が弱ってきたり、自分も先が見えてきて老後の不安があったりさ、まあまあ大変な年代じゃん?ましてなっちゃんは本業のイラストの仕事が殆どなくて、フリマアプリで不要品を売って稼いでいるし、ノエチは秀才で博士号も取ったのに今は非常勤講師の掛け持ちと、2人とも仕事も不安定。古い団地はいつ建て直し計画が持ち上がるかわからないし、不安要素を数えればキリがないんだけど、2人はどこか暢気でゆるっとしてるんだよねー。

なんでこの2人の暮らしがこんなにも満たされたものに映るんだろう?と考えて、無いものを欲しがってないからかもな、と思った。
社会的な成功とか、パートナーとか子供とか、あるいは財産とか、2人には無いものも多い。けど、別に2人ともそういう物を欲しがってなくて、一緒に日々のご飯を美味しく食べて、テレビ見ながら2人で茶々を入れ、時々ケンカして、なんとなく仲直りして、見栄も肩肘も張らずに暮らしてるんだよね。

何も取り繕う必要がない、助け合える相手と一緒に美味しいご飯が食べられる。幸せって結局、これに尽きるのかも。

地味な桃源郷みたいなふたりの団地暮らし、読んでるとこちらの心もほぐれます。
ドラマと合わせて、ぜひ。

2024年9月27日
かおりより

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