運命の一冊と出会う話~岩田徹『一万円選書』
やすこさんへ
京極さんの書楼弔堂シリーズ、4冊目が出てたんだね。知らなかった。読まなきゃ!
弔堂は本屋なのに客が自由に本を買えない、運命の一冊だけを買える特殊な本屋、という所からこの本を思い出しました、『一万円選書』。
やすこさんは『一万円選書』って知ってる?北海道のいわた書店さんが始めたサービスで、お客さんが書いた『選書カルテ』をもとに、店主の岩田さんがその人に合わせたおすすめ本を1万円分選んで送ってくれるの。
私がこれを知ったのはNHKの『プロフェッショナル』という番組で。
本に1万円(しかも好みの本かわからないのに)というのは私には結構勇気のいる金額だけど、岩田さんがお客さんから届いたお手紙をじっくり読み込んで、その人にとって今必要な本、これから先の人生に寄り添ってくれる本をと真摯に選んでいる様子にはとても心惹かれた。番組では本を読んだお客さんの感想、意外な本が心に刺さって泣いたなどの話もあって、会ったこともない遠い土地の本屋さんがこちらの心の裡をわかってくれて本を勧めてくれるってすごい!私もこれ体験したい!と思っちゃった。
番組放送直後は受付停止中だったけど、2年くらい経ってふと思い出して応募したら、本を選んでもらうために書く『選書カルテ』の質問が送られてきました。
やすこさんもちょっとやってみて。結構難問だよ。自分の読書遍歴だけじゃなく、何が大事で、何に傷ついて、何に悩んでいて、本当はどうありたいのか、いつの間にか自分自身に向き合うことになるの。
お客さん自身がこの選書カルテを書く過程で、過去の傷・現在の立ち位置・未来の希望などの答えを自ら見つけていく、と本にも書かれていたけど、私も何日も悩みながらようやく書き上げた、その作業自体に充足感があったのを憶えてる。
岩田さんはカルテの内容から、その行間を読んでおすすめ本を決めているそうなんだけど、その後届いた11冊の本に同封されていたお手紙には選書についての解説はなく、なぜこのセレクトだったのかはわからなかった。でもこの本の中で、”よく選書に入れる本”として挙げられた本の中に私に送られてきた本も何冊かあって、「あ、あれはそういう意味で選んでくれたのか」と答え合わせができたよ。
一万円選書といい、この前行った梟書茶房といい、出版不況の中でも本が売れる面白い取り組みがある。本好きとしては心強いし、応援したいよね。
2025年1月17日
かおりより