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建築への愛がダダ洩れの話~宮田珠己『宮田珠己の楽しい建築鑑賞』

やすこさんへ

時期的にはクリスマスの本を紹介したいところなんだけど、特に思いつかなかったし、普通に好きな本の話を今日もします。

私が古い建物好きって話はやすこさんもご存じの通りだけど、ここ数年、ちょっとした建築(鑑賞)ブームなのは知ってるかな?大阪、東京、神戸など各地で建築祭が開催されたり、一般向けの建築ガイド本が続々刊行されたり、ガイド付き見学ツアーが人気を博していたり、とにかく盛り上がっているのよ。

人気が出るとジャンルのすそ野も広がるもので、私みたいに明治から昭和初期のレトロ建築が好きな人、高度成長期のモダニズム建築が好きな人、なんていうのは普通で、「そこ注目します?」ってジャンルにまで、熱い視線を注ぐ人が増えてきているようです。

この本は15人の建築愛好家に、彼らが愛する建築物の魅力を語ってもらったインタビュー集なんだけどね、団地が好き、とか、灯台が好き、くらいまでは私も「わかるわかる」ってすんなり思ったけど、エアコンの室外機や配管、ビルの送水口の愛好家となると「そこですかー⁈」って感じで、さすがに若干たじろいだわ。
でもこの本では著者の宮田さんが、私たちと同じ素人の立場で話を聞いてくれていて、すごーく率直に「これ、魅力あります?」「なんてことないデザインに見えるんですが」など正直な感想をぶつけてくれるので、マニアックすぎてついていけない・・・とならずに、ニッチなものに惹かれる人たちの話も楽しめるの。私、送水口なんて今まで気に留めたこともなかったのに、これ読んだら俄然興味出てきちゃったよ(笑)

送水口は健気


愛好家の人の話で特に印象的だったのが、建物を作った人たち、維持管理している人たちへの強いリスペクトと、失われる前に記録に残したいという、熱い気持ちでした。

戦前の凄い建物とか、有名建築家の作品は残そうという声があがりますが、テラゾーでそんなことを言う人はいない。一時代を映す資料なのに誰も記録すらしていないので、ならば自分がとっておこうかなと、そういう使命感みたいなものはあります

CASE4.テラゾーのいじらしさ 瀧亮子さん

ベストワンは広島県庁です。'56年に建てられた建物で、つまり被爆して11年後にはもう竣工してる。当時、まわりは焼け野原だったわけですよね、そんななか、お金もないのに、こんな(大規模な)のを建ててる。広島の人たちの、つくらなきゃいけないっていう思いを感じます

CASE14.庁舎建築と人々の思い 西本志織さん

建築って無機物だけど、そこには建てた人や使う人の思いが必ずあるのよね、そこがいいんだよね~とあらためて思って、また建物を見に行きたくなりました。機会があればまた一緒に行こうね。

2024年12月20日
かおりより

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