しゃべりたいふたり〜第9回『最後のおやつ』について語らう〜
かおり:前回の『ライオンのおやつ』で、やすこさん『最後のおやつ』について書いてたよね。ブラマンジェなんてこじゃれてるわ。都会の子だったんだなあって思っちゃった。
やすこ:えー、そうかなあ。うちの母はさ、おやつとか洋服とか手作りするのが好きだったんだよね。パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたのとかも好きだったな。新聞に載ってるおやつとかもよく作ってたよ。
かおり:お菓子作りが好きなお母さん、いいねー。ブラマンジェとかババロアとか、名前だけで実態を知らないまま大人になったよ、私は。
やすこ:かおりさんのお母さんはお菓子作る人じゃなかったんだね。
かおり:そうね。手作りで言ったら姉がプリン作ってくれたことはある。失敗して"す"が入ってるし、カラメルもちょっと焦げて苦いんだけど美味しかったの。でも最後のおやつとしてホスピスで食べたいかと言ったら、別に食べたくはないかな……。
やすこ:なるほど。お姉さんはなんでプリンを作ってくれたの?
かおり:なんでかな?多分、本か何かを見て作りたくなったんじゃないかな?
あ、思い出のおやつ、もう一個思い出した!ハウスの『シャービック』って憶えてる?あれ好きだったー。粉に牛乳入れて凍らせるやつ。よく作ってた。
やすこ:シャービックね!私も好きだった。フルーチェも好きだったけどね。子どもが火を使わなくても作れる安全なおやつだったから、自分でもよく作ったよ。懐かしいなあ。おやつって確かに生きていくために必須の物じゃないから、いろいろな思い出がついてくるもんなんだね。
かおり:花ちゃんはどんなおやつの思い出があるの?
花:私は、おばあちゃんが作るウィークエンドかな。レモン風味のアイシングをかけたパウンドケーキ。あれはねえ、絶品なの。うちの庭にレモンの木があってね、それを持っていくとおばあちゃんがケーキにしてくれる。レモンがとれる時期になるとおばあちゃんも私もなんかウキウキするんだ。
かおり:これまたオシャレな……。
花:おばあちゃんはお菓子作りが好きなのが高じて、料理教室で働き始めちゃってお菓子作りが上手になったの。小さいころからずーっと当たり前に食べてきたから、食べられなくなったら困るなっていうのが今の悩み。
かおり:孫娘がそこはしっかりレシピを継承して、作ればいいのでは?
花:そうなの。実はもうレシピはもらってるし、教えてももらってるんだけど、なかなか自分では作る気になれなくて……。自分でやってみて、失敗したらおばあちゃんに聞けるうちにやんないとなという気がしてきた。
かおり:がんばれ!そして作ったら食べさせて(笑)
ところで、既製品のお菓子だったら、なにが思い浮かぶ?私はヨックモックのシガール!
やすこ:シガール!美味しいよねえ。私はね、ウエストのリーフパイだな。子どものころ、特別な日に父が買ってきてくれたんだよ。ジャムののったヴィクトリアってやつも美味しいんだけど、やっぱりリーフパイが一番好きでね。
かおり:うん。美味しいよね。
やすこ:大人になってからは東京に行くと5枚入りのをこっそり買ってきて、夜な夜な一人で食べてたの。あるとき、箱入りでいただいたことがあって、思わず子どもたちに「これ美味しいよ」って教えちゃってさ、それからは独り占めできなくなったんだよな……。みんなで山分け。本当に失敗したわ。
かおり:美味しいものは一緒に、だよ(笑)。でも好きな物をこっそり抱え込んで食べる快楽もわかる〜!
花:私はねえ、まだそこまでのおやつに出会ってないかもしれない……。秋になると送られてくるすやの栗きんとんとか、バレンタインの特別なチョコレートとか、好きなおやつはいっぱいあるけど、これってお菓子はパッと思い浮かばないもん。
やすこ:まあね、私たちは長く生きてるからね。
かおり:でも昔ながらの定番お菓子に落ち着く(笑)最近の方がお菓子の味レベルは上がってるはずなのに、結局シガールとか鳩サブレが最高!って思っちゃう。完成度が高いよね。
やすこ:ホントにね。でさ、鳩サブレ、頭と尻尾どっちから食べるか迷わない?
かおり:迷わず頭から食べる!何故なら捕食される鳩(サブレ)目線で考えた時に、頭からの方がこう、一気に息の根をだね…
やすこ:いや、サブレの話だよね⁇そんなこと考えて食べる人いるんだ⁈
かおり:えー、考えない?これから食べる時、考えてみてよ
やすこ:いやだよ(笑)