電車でうっすら泣いた話〜岸田奈美『傘のさし方がわからない』
かおりさんへ
こんにちは。
前に書いたことがあるような気がするけど、私は傘のさし方が絶望的に下手くそなの。大きめの傘をさすようにしてるけど、必ずどちらかの肩から腕にかけてはビショビショになっちゃう。なので、今日はジャケ借りならぬタイトル借りしてしまった岸田奈美さんの『傘のさし方がわからない』について書こうかなと思います。
なにしろ、タイトル借りしてるくらいなので、私は岸田奈美さんのことを知らなかった。NHKのドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の原作者だったのね。ドラマはちょっと重そうだなと思って見てなかったの。
でね、電車で読み始めてから「傘のさし方がわからなくて濡れてしまう」なんて軽い話ではないと気がついた。そして、読んでいるうちに引き込まれて、奈美さんの文章力と思考力に圧倒されてしまった。さらっと読みやすいけれど、すごい内容が書かれているじゃないかと。
ボルボV40が生産中止になったと聞いて、お母さんと2人、大慌てで何とかして手に入れるために奔走した理由は、そういうことだったのかと心に響いたし、円覚寺のお坊さんがしてくれた話は、私にもじわーっと染み込んだ、
流行病の予防注射を家族揃って打った話をSNSに書いたら、さまざまな反響があって。それをきっかけに聞いた、お父さんが亡くなった時の病院の先生の話は、電車で読んでいるのに、不覚にもうっすら涙が出てしまった。
まだ、お若いのに、なんでこんなに深い話が書けるんだろうと思ったんだけど。その理由をうかがい知る一文があったの。
きっとご両親もいろんな気持ちでいっぱいだっただろうに、それでも幼稚園を卒園したばかりの奈美さんを子ども扱いせず「思い」を伝えたんだと。そんなご両親だったからこそ、「私はダウン症だからではなく、弟だから、愛している」とはっきり宣言できる人に成長したんだろうなと思った。
どのテーマも重いけど、読後感は意外にもさわやか。差別や偏見から自由な奈美さんのことが好きになりました。早速、NHKオンデマンドでドラマを堪能し、noteの記事をかぶりつきで読みながら泣いたり笑ったり大忙しな私でした。
2024年12月13日
やすこより