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理系オンチでも心が震える話〜伊与原 新『宙わたる教室』〜
かおりさんへ
このあいだね、末っ子のジロと久々に大喧嘩をしたの。これ以上同じ空間にいてはいけないと、例によってスポーツジムに行って、ドラマを見ながら歩くことにした。何を見ようか悩んだんだけど。「宙わたる教室」の評判がよかったことを思い出して、NHKオンデマンドで見始めたんだよね。
あっと言う間に、話に引き込まれて、最後は汗なんだか涙なんだかわかんない状態で見終わった。ジムから帰って、思わず現在の放送に追いつくように全部見てしまったわ。
その様子を見ていたジロが数日後、「学校の図書館にあったから、借りてきたよ。読んでみれば?」と原作本を持ってきたの。ドラマが楽しみだから、読むべきかどうか非常に悩んだけど、やはり、先が気になって、読み始めてしまいました。今日は、伊与原 新さんの『宙わたる教室』について書こうと思います。
何もかもがうまくいかない不良の柳田君、フィリピン料理店を営むアンジェラさん、起立性調節障害で保健室登校をする佳純ちゃん、金の卵として集団就職し、高校に通えなかった長嶺さん、さまざまなバックグラウンドを持ち、年齢もバラバラな4人が謎多き藤竹先生に誘われ、科学部で火星のクレーターの再現実験をするお話。
科学部の部員の持つそれぞれの事情を丁寧に描いているので、少しずつ彼らがお互いを理解し始め、歩み寄り、自分の得意分野で能力を発揮し出すことに心が震えるんだよね。
多様性多様性と叫ばれるけれど、この科学部ではそんな事を叫ばずとも多様性を許容しないと部が成立しないの。そして、それぞれが違うバックグラウンドを持っているからこそ、出てくるアイディアに「なるほど」と感心してしまう。
また、さりげなく学校のなかで、科学部に必要な人材を見極め、寄り添いながら、科学部の実験がよりよいものになるように誘導していく藤竹先生は、なかなかに食えない男。でもね、恐ろしく優秀で、かつ優しい藤竹先生のような先生に出会い、近くで関わりあえたらどれだけ幸せなことだろうかと思う。
私は、全日制でコンピュータにめっぽう強く、情報オリンピック日本代表を目指している丹羽君と科学部に入って急成長した定時制の柳田君の交流の話が好きだった。普通の環境だったら決して関わり合うことのなさそうなふたり。本気で科学やプログラミングに向き合っているからこそ、お互いを認め合えるようになっていく過程がね、いいんだ。
ご存知の通り、私は理系オンチなので、正直実験の内容が理解できているかと言ったら、まあ、理解できてない…。それでも、科学はとてもワクワクするものだなって思う。お勉強はイマイチだけど、生きる力は持っているアンジェラさん的立ち位置なら、科学部に入れるかなあ…。
ドラマは、いよいよクライマックス!かおりさんは、ドラマ見てるかな?お時間があれば、ぜひドラマも本も楽しんでほしいな。では、また。
2024年11月29日
やすこより