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「すごい!」「天才」はNG!? モンテッソーリ流の褒め方は、自己肯定感を育むことができる!

前回の記事では、モンテッソーリ流の「叱り方」をモンテッソーリ教師あきえ先生にお伺いしましたが、今回は「褒め方」について。褒めれば褒めるほどいい、褒めて伸ばすと、思っている方も多いと思いますが、その際に心がけるポイントについてもご紹介します。

「100点なんて天才!」「足が速くてすごい」はNG⁉ 褒め方のポイント

子どもが頑張った時や、何かを見せてくれた時、思わず「すごい!」「天才」などと、おだてたり、褒めちぎってしまうことがありますよね。その時に注意するべきなのが、「結果」ではなく「プロセス」にフォーカスし、「認める」に変換していくことをおすすめします。

「褒める」→「認める」への変換サンプル
●サンプル①「ママの顔描いたよ」と見せてくれた
褒める:「かわいい~!とても上手!」
認める:「クレヨンで描いてくれたんだね。顔を大きく描いたんだね」
●サンプル②運動会で1番になった
褒める:「〇〇くんは、本当に運動神経がいいのね!大好きよ」
認める:「かけっこの練習していたもんね。今日はいつもより手を大きく振れていたね」
●サンプル③園の発表会のあと
褒める:「〇〇ちゃんが1番だった。あなた天才ね!」
認める:「苦手だって言ってたジャンプ、高く飛べていたね。ママとパパ、見ていたよ」

上記の「褒める」声かけは、結果や人格にフォーカスしています。また、このような声かけをする場合、パチパチと拍手をしたり、いつもと声色を変えて少し大げさに声をかけたりして、「褒めちぎる」ようなこともあると思います。
それに比べて「認める」声かけは、普段通りの話し方で、行動やプロセスにフォーカスしています。
「認める」は、少し物足りないと感じるかもしれませんが、子どもは褒められるためにやっているのではなく、自分がやりたいからやっていることがほとんどです。それに対して毎回褒めちぎるような褒め方をしていると、子どもは何かをするたびに「すごい?」「拍手しないの?」と、「褒めちぎる」を求めるようになります。
大切なのは結果ではなく、がんばってやり遂げた子どもの姿です。そのため、結果ばかりを褒めることはあまりおすすめできません。


間違った「褒める」が招くことと「認める」が育てること

研究でも明らかになっていることですが、うまくいかなかった時、結果や人格を褒められていた人は「自分がだめだったんだ」という硬直マインドセットになるのに対し、行動やプロセスを認められた人は「努力が足りなかったから、そこを改善しよう」という成長マインドセットになります。
結果、前者は自己肯定感が低くなり、後者は自己肯定感が高くなります。
大切なのは何かができたから褒めることではなく、子どもの存在そのものを認めること。「100点を取ったから天才」「1位になったからすごい」ではなく、「今日も元気でいてくれてありがとう」「あなたがやっていること、いつも見ているからね」と、存在承認をしてあげることです。
存在承認を日常的にしてもらっている子どもは、潜在意識の中に「認められた」ということが蓄積され、自尊感情、自己肯定感、自己効力感などが高くなります。
誰かに褒められたくて、褒められるために何かをすることは外発的動機、自分がやりたいからやることを内発的動機と言いますが、今は内発的動機に向き合えない大人がたくさんいます。「自分がやりたいからやる」という内発的動機で子どもが動けるようになるよう、子どもの内発的動機を否定しないようにしていきたいですね。


「褒める」にまつわるお悩みにあきえ先生がアンサー!

Q:日常にありがちなシチュエーションで、子どものことをどのように認めたらいいですか?

A:できない部分を指摘するのではなく、できた部分にフォーカスした声かけをしましょう

「認める」声かけ例
●身支度
「今日は1回起こしただけで起きられたね」「自分で洋服を着られたんだね」「奥歯までしっかり磨けているね」
●食事
「パンは残さず食べられたね」「食器を片づけてくれたの?助かるよ」
●「見て」と言われた
「“の”って書いたの?自分で書けて嬉しいね」「はみ出さないで塗ることができているね」
●トイレトレーニング
「自分でおしっこいけたね」「『おしっこ』って教えてくれたから間に合ったね」
●練習していたことができた
「5mも自転車に乗れたね。昨日より長くこげるようになったね!」「鉄棒にぶら下がれるのは腕の力が強いってことよ」

Q:気の利いた言葉が浮かばずに「すごいね」ばかり言ってしまいます。

A:何がすごいかを伝えてあげましょう
「すごい」という言葉がNGワードなわけではないですが、「すごい」ばかり言っていると、子どもが「すごい」を欲してしまうようになることがあります。どんなところがすごいのか、具体的に伝えてあげましょう。
例えば、「花びらまで細かく描けていてすごいと思ったよ」など、見たままのことでも大丈夫です。
とっさに思い浮かばない時は、「絵を描いたんだね」と、子どもがいったことをそのままリピートするのもおすすめです。

例えば、「かけっこで1番になったんだ」「ママにお花をくれるんだ」。あとは、「1番取るってどんな気持ち?」「ここにおひさまの絵を描いたのはなんで?」と、子どもに質問してみるのもいいですね。
自分の身に置き換えて考えて、例えば職場の上司に「すごいすごい」といつも言われていたとします。初めは嬉しかったとしても、次第に「何がすごいんだろう?」「もしかして、すごいと言えばいいと思ってる?」という気持ちがわいてくるのではないでしょうか?
何がすごいと思ったかを具体的に伝えることで、子どもが自分のことを客観視することができ、自分の得意なことに気がつくきっかけにもなります。

Q:褒められることに慣れてしまい、頑張ろうとしません。

A:子どものタイプによってそれぞれの対応を
「もっと自分もこうなりたい」と感じるきっかけがあるような環境に行き、「自分もやってみよう」と感じるきっかけをつくるのもいいですね。
しかし、やっと自信がついてきたという子は、その自信をわざわざへし折るようなことはしなくてもいいです。「〇〇ちゃんは速く走れていたよね。あの子は腕を振っているね。あっちの子は、まっすぐ前を見ているんだね」と、他の人のいいところにも目を向けて認めていくのもおすすめです。


子育てから「叱る」と「褒める」をなくすと気持ちがラクになる

ここまで「褒める」ではなく「認める」かかわりについてお話してきましたが、子育てをしていると、時に本当に感動するような「すごい」ことに直面することがあります。その時は、感情を押し殺してクールでいる必要はなく、全力で感動や感激をストレートに伝えて大丈夫です。
今、子どものことを「褒める」というかかわりをしている方が「認める」にシフトしていった際、もしかすると、子どもが「すごいは?」などと求めてくることがあるかもしれません。その時は、「すごいと思うよ」と素直に伝え、グラデーション的に「認める」かかわりにしていけたらいいと思います。
そのかかわりこそが、自尊感情、自己肯定感、自己効力感を育み、内発的動機でやりたいことができる子どもを育てて、自立へと向かわせます。
前回は「叱る=伝える」今回は「褒める=認める」というお話をさせていただきました。私たち大人は、「叱る」と「褒める」という感情のジェットコースターに子どもを乗せてしまうことがありますよね。「叱らなきゃ」「褒めなきゃ」というのは、大人にとって意外とプレッシャーになっています。
子育ての中でこの2つをなくすことで、大人は楽になり、子どももジェットコースターに乗らなくて済むのです。

監修:モンテッソーリ教師あきえ
国際モンテッソーリ教師ディプロマ(AMI)、保育士、幼稚園教諭。
公立の幼稚園教諭をしていた頃、日本の一斉教育に疑問を抱きモンテッソーリ教師に。現在は「子どもが尊重される社会」を目指して、モンテッソーリ教育に沿った子どもや子育てについての発信、オンラインスクール「Montessori Parents」の運営、ベビーブランド「mu ne me(ムネメ)」ファウンダー、オンラインコミュニティ「Park」を主宰。

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