【中学受験】9月から始まる塾の「歴史」にフル活用!角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』の使い方
「歴史まんがを買ったけど、そのまま子どもに読ませればいいの?」
「塾で歴史の授業が始まるけど、効果的な歴史まんがの使い方はあるの?」
多くの中学受験塾では、小学5年生の9月から歴史の授業が始まります。
そのため、少しでも歴史に興味を持たせようと、歴史まんがを購入されるご家庭も多いかと思います。
今回、上記のような疑問に対して、中学受験「社会」専門のブログを運営しているゆきさんに、塾の歴史の授業に併せた角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』の活用法についてお話を伺いました。
はじめに
中学受験ブログ、「ゴロブーSTUDIO」を運営しているゆきと申します。ブログでは主に、中学受験向けの社会の勉強法に関する記事を書いています。
その中でも、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』(以下『日本の歴史』)に関する記事はよく読まれており、読者からも「『日本の歴史』のおすすめの購入時期」や「『日本の歴史』を使った先取り勉強法」に関する質問をたびたびいただきます。
そこで、今回、9月から始まる塾の歴史の授業に併せた『日本の歴史』の効果的な活用法を紹介したいと思います。
【準備編】『日本の歴史』は親子で復習!
まず、塾で歴史の授業が始まったら、『日本の歴史』は予習ではなく復習メインで使いましょう。その理由は二つあります。
一つ目の理由が効率性です。『日本の歴史』は大学受験まで使える歴史まんがのため、中学受験レベルを超える内容も当然含まれます。予習の段階では、どうしても重要なポイントがどこか正確には分かりません。強弱をつけて効率よくまんがを読むためにも、復習メインで使いましょう。
もう一つの理由が楽しさです。一般的に、子どもは問題が解けると勉強が楽しくなっていきます。それと同様に、歴史まんがの内容が理解できると、まんがを読むのが楽しくなっていきます。最後まで楽しくまんがを読むためにも、やはり『日本の歴史』は復習メインで使っていきましょう。
また、この機会にお子さんだけでなく、ぜひ親御さんも一緒にまんがを読むことをおすすめします。子どもが塾で習った歴史の知識を、親が「すごいね」といいながら聞いてあげると、子どもはとても喜びます。できるだけ子どもと歴史の会話ができるよう、親御さんも歴史の学び直しをかねて一緒にまんがを読んでみましょう。
では、ここから具体的に、塾の復習でどのように『日本の歴史』を使っていくのか、全16冊セットの中からいくつか例を挙げて説明していきます。
【基本編1】「人物相関図」で押さえる3つのポイント「いつ・だれが・何をした」
歴史の勉強では、ただ単に出来事の名前を覚えるのではなく、「いつ、だれが、何をした」の3つのポイントを押さえることが重要です。このポイントを押さえてまんがを読むだけで、まんが自体が物語になっているため、自然と出来事の因果関係を理解できるようになります。
そして、この3つのポイントを一気に復習できるツールが、『日本の歴史』の巻頭ページにある人物相関図(以下「相関図」)です。まんが本編に入る前に、まずはこの相関図を使って塾の復習をしましょう。
では、その使い方について、第2巻を例に見ていきます。
「いつ」
最初のポイントは、「いつ」を表す時代の確認です。時代を知らずに歴史まんがを読むのは、現在地を知らずに地図を読むようなものです。時代は相関図の右上で確認できます。ここを見ると、第2巻の場合は、「飛鳥~奈良時代」というのが分かりますね。このように、必ず最初にいつの時代かを確認した上で、次の「だれが」に進んでいきましょう。
(発展)
時代をさらに短く区切ると西暦(以下「年号」)になります。中学受験では、入試問題の傾向から、この年号暗記が避けて通れません。難関校を狙う場合は、ほとんどの塾で最終的に150個ちかくの年号を覚えさせられます。後になってあわてないよう、早い段階から少しずつ覚えていきましょう。
ポイントは最初から細かく覚えるのではなく、長いスパンで覚えることです。そこで、おすすめなのが相関図の右下にある[主な出来事]の年号です。各時代の中でも特に柱となる年号が載っているため、最初はこの年号を中心に覚えていきましょう。
「だれが」
次のポイントは、「だれが」を表す歴史人物です。この相関図が最も威力を発揮するところです。ぜひ、お子さんに相関図のコピーを渡して、次のような声かけをしてみてください。「塾で習った歴史人物に〇をつけてみて」という感じです。予習の段階ではだれが重要な歴史人物かよく分かりませんが、復習の段階ではそれが頭に入っているはずです。この相関図の中から、塾で習った歴史人物を思い出させてみましょう。
結果、このような感じで○がつくと思います(難関校レベルは除きます)。
覚えるべき歴史人物が全体の約半分になりました。これで、飛鳥~奈良時代の「だれが」というのを押さえられました。
「何をした」
最後のポイントが、「何をした」になります。これも相関図を使います。相関図をよく見てみると、人物同士が、赤や黒の線(矢印)で結ばれています。赤い線は「夫婦」や「親子」などの親族関係を表し、黒の矢印は「命令」や「倒す」などの行動とその向きを表しています。
ここで、注目するのが黒の矢印です。黒の矢印こそが「何をした」を表す部分になってきます。聖徳太子を例に見てみましょう。小野妹子に向かって、黒の矢印(命令)が出ています。この矢印が「聖徳太子が小野妹子に出した隋への派遣命令」です。
ここまで押さえると、「いつ・だれが・何をした」の3つのポイントがつながり、「飛鳥時代、聖徳太子が、小野妹子に隋への派遣を命じた。」というのが復習できました。
ではこれらを踏まえたところで、まんが本編を少し読んでみましょう。
小野妹子が謁見した相手は、中国史上の暴君とされる煬帝(ようだい)です。
煬帝(ようだい)は、手紙の中の「天子」という言葉に激怒しました。
なぜなら、中国において天子とは天から認められた皇帝ただ一人であり、それを勝手に日本人が名乗ったからです。
聖徳太子が「天子」という言葉を使ったのは、これまでの朝貢外交(日本が貢物を持ってへりくだる外交)ではなく、あくまで隋と対等な立場での外交を目指したからとされています。
このように、まんがで読むと登場人物のセリフや背景の描写があるため、出来事の内容が記憶に残りやすいです。
また、絵だけでは把握しづらい部分については、ナレーションが内容を補足しているため、出来事の因果関係も自然に理解できます。
塾の復習では、まず相関図で各人物を確認し、その後、まんが本編を読んで理解を深めていくようにしましょう。
【基本編2】「どこで」を学ぶ「トラベルマップ」
【基本編1】では、「いつ、だれが、何をした」というのを押さえました。これに加えて、出来事によっては「どこで」という項目が重要な場合もあります。例えば、「壇ノ浦の戦い」。これは、「平安時代の末期に、源義経が平氏を滅ぼした戦い」ですが、これは「どこで起きた戦いでしょう?」。
この「どこで」という場所を一覧にしたものが、巻末にある「トラベルマップ」です。今度は、第5巻を例に見てみます。
源平合戦の各地で起きた戦いが載っていますね。この「トラベルマップ」も塾で習ったものを中心に確認していきます。中学受験では基本的に壇ノ浦の戦いだけを習うので、これは「山口県」で起きた戦い、というのをここでは押さえましょう。
また、源平合戦にはもう一つのポイントがあります。この地図をよく見ると、1180年から1185年にかけて、戦いの場所が西へ移動しているのが分かります。平氏が源氏と戦っていく中で西へ西へと逃げていったのですね。
このように歴史の出来事を地図上の一覧で確認すると、歴史の大局をつかむことができます。主に「戦い」の場所を確認する場合は、この「トラベルマップ」を活用して歴史の全体像を把握するようにしましょう。
では、この「壇ノ浦の戦い」について、まんが本編ではどのように描かれているか読んでみましょう。
いかがでしたでしょうか。
まんがを読むと、平氏が西へ逃げた結果、源平合戦の最後の舞台が壇ノ浦になったことや、壇ノ浦の戦いが地上戦ではなく海戦であることが理解できたと思います。
このように、活字だけではイメージしにくい出来事も、登場人物のセリフや背景の描写からその出来事の情景が鮮明に伝わってくる点が、歴史まんがで学習する一番のメリットです。
【基本編3】史料を押さえる「歴史写真館」
「いつ・だれが・どこで・何をした」まで押さえれば、後、必要な知識は「史料」関係です。史料には、遺跡や建築物、銅像など様々なものがありますが、その史料をカラー写真で収録したものが「歴史写真館」(以下「写真館」)です。ここでも、相関図やトラベルマップと同様に、塾で習ったものを中心に写真館の中から確認していきましょう。
下の例は、第1巻の写真館の一つですが、入試でも頻出の「ワカタケル大王の鉄刀と鉄剣」についての写真です。
この写真館の特徴は、ただ写真を掲載しているだけではなく、史料に関する解説も付いているところです。「この鉄刀(熊本県)と鉄剣(埼玉県)が離れた場所で出土したことから、ワカタケル大王(大和政権)の力が全国に及んでいたことが分かる」という解説は、一般の資料集ではここまで詳しく載っていません。
こうした解説も踏まえて、カラー写真で史料関係を確認できると、まんがの本編の内容もさらに深く理解することができます。ぜひ、本編を読み進めながらでもいいので、塾で習ったものを写真で確認しましょう。
【応用編】思考力を鍛える「絵で見る歴史ナビ」
ここまでで、『日本の歴史』の基本的な使い方をひと通り紹介してきました。基本編の内容だけでも継続して取り組めば十分力はつきますが、最後に「応用編」として、近年、特に求められるようになった思考力について役立つページを紹介します。個人的には一番おすすめのページです。
それが、各巻とも8~11ページに描かれている「絵で見る歴史ナビ」です。歴史の大きな流れをつかむためのコーナーであり、塾の歴史の授業前に読むのも効果的ですが、復習に力を入れて使うことをおすすめします。その際の着眼点について、第8巻を例にあげて紹介します。
上の絵は表題のサブタイトルにあるとおり、安土桃山時代を描いた絵です。
ここで、ぜひ考えてほしいのが「なぜ、この絵は安土桃山時代といえるのか?」ということです。吹き出しにヒントはありますが、できるだけこの絵だけを見て、その理由を答えられるようにしましょう。時代背景をきちんと理解していない場合、この絵を「江戸の町」と思う人がいてもおかしくありません。江戸時代ではなく、なぜ安土桃山時代といえるのか、その理由をきちんと説明できることが重要です。
最近の中学入試では、与えられた資料から情報を読み取り、自分で考えて説明する、というような思考力を試す問題が多く出題されています。今回も、与えられた絵から時代背景を読み取り、その理由を自分で考えて説明する、ということですね。
安土桃山時代である理由については、次のページの4コマまんがで解説されています。
特に、安土桃山時代の特徴として分かりやすいのが、Aの安土城とBの南蛮人です。
安土城は琵琶湖東岸の安土山に建てられ、日本で初めて本格的な天守を備えた城です。その壮大なスケールは、当時の織田信長の権力を象徴するものでした。ただし、本能寺の変で信長が亡くなった後に安土城は焼失しています。
また、信長は鉄砲をはじめとした南蛮文化を積極的に取り入れて、キリスト教を保護しました。一方で、信長の後に天下統一を果たした豊臣秀吉は、初めキリスト教に寛大でしたが、その後バテレン追放令を出して宣教師たちを国外追放しています。
つまり、この絵は、秀吉が天下統一をする前の信長のいた安土桃山時代といえるわけです。
このように、一つの絵からでも、その時代に関する様々な視点の特徴を確認することができます。これは、活字テキストでは得られない効果的な学習方法です。絵で見る歴史ナビは、16巻全てにあります。その絵からなぜその時代といえるのか、その理由をきちんと自分の言葉で説明できるようにしましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。各見出しで紹介したように、中学受験の歴史を効率よくかつ楽しく学習するのであれば、『日本の歴史』は復習メインで活用することをおすすめします。
そして、何よりも塾が最良のペースメーカーとなってくれるので、塾の進度に併せて継続して取り組んでいきましょう。最後の第16巻まで読み終えた時は、きっと歴史が得意になっているはずです。
また、ぜひこの機会に親子で『日本の歴史』を読んで、歴史に関する色々な話をしてみてください。そうしていくうちに、問題を出し合うことが単なる歴史学習の手段にとどまらず、親子の受験の絆をより深めていくでしょう。
これからも、『日本の歴史』を親子のコミュニケーションツールとして、楽しく活用していってください。