【中学受験】小6歴史の過去問対策に! 角川まんが学習シリーズ『日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史』の活用法
・はじめに
中学受験ブログ、「ゴロブーSTUDIO」を運営しているゆきと申します。前回、こちらで「9月から始まる塾の歴史の授業に併せた『日本の歴史』の使い方」を執筆させていただきました。
前回の記事では、『日本の歴史』全16巻セット(以下、本編全16巻)をメインに紹介しましたが、角川まんが学習シリーズには、他にも近現代史のみに焦点を当てた『日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史』全3巻(以下『別巻 近現代史』)があります。
もちろん本編全16巻にも近現代史は収録されていますが、今回は、この『別巻 近現代史』について、本編全16巻とはどこが違うのか、また、中学受験の歴史の勉強ではどのように使えばいいのか、その効果的な活用法を紹介したいと思います。
1.本編全16巻と『別巻 近現代史』の違い
『別巻 近現代史』は、第一次世界大戦から平成の終わりまでを扱っています。本編全16巻との年代及び巻数の比較は、次のとおりです。
★本編全16巻と『別巻 近現代史』の年代と巻数の比較
一見、年代の幅も巻数も両者にはあまり差がないように見えますが、『別巻 近現代史』は、本編全16巻と比べて大きな特徴が一つあります。
それが、世界史の情報量です。
中学受験では、日本史だけでなく世界史の分野もある程度出題され、特に近現代史においてはその割合が高くなっています。
その点、『別巻 近現代史』は世界史に関する内容が多く盛り込まれており、日本史と世界史を一つの流れで描いているため近現代史を効率よく理解できます。
また、世界史の視点を加えることで、本編全16巻では触れられなかった出来事や背景も収録されているため、より詳細に近現代史を学習できます。
2.『別巻 近現代史』は小6の過去問対策で使おう!
それでは、『別巻 近現代史』はどのように使えばいいのでしょうか。
結論からいいますと、小6の過去問対策で使うのが一番効果的です。なぜなら、それまでの塾の歴史の授業は、本編全16巻で十分対応できるからです。
中学受験の一般的な過去問対策は、多くの塾が小6の秋頃から始めます(早いところは夏休みから始めている塾もあります)。これは、全体的な知識が受験レベルに到達していないと、過去問を解いても全く歯が立たないためです。
歴史も同様に、古代から現代までの知識をある程度身につけた後に過去問対策を行います。
そのため、小5の歴史では本編全16巻を使って土台となる知識をしっかり固め、小6の過去問対策から『別巻 近現代史』も併用して使うことで、近現代史に関する理解がさらに深まっていきます。
3.実際の過去問で『別巻 近現代史』を読んでみよう!
それでは、実際に過去問をいくつか見ながら、本編全16巻と『別巻 近現代史』を読んでみましょう。
まずは、開成中学校で出題された問題です。下線部㉗はサンフランシスコ平和条約に関する内容です。
【2020開成中学校】
問題自体は、選択肢エの「日本の国連加盟」が大手塾の年号暗記カードにも収録されており、1956年の日ソ共同宣言とセットで覚えるため、この選択肢のみで誤りと解答できる子も多いかと思います。
ただし、サンフランシスコ平和条約は近現代史の中でも特に重要な条約であるため、選択肢ア~ウについても正誤判断ができるようにしておきたいです。
この部分を、まずは本編全16巻でどう表されているのか、該当の第15巻107頁を見てみましょう。
サンフランシスコ平和条約の調印と同時に日米安全保障条約が調印され、日本国内に米軍基地が置かれることになったというのは分かりましたが、ソ連のことや領土範囲については、具体的にその内容が分かりません。
では、『別巻 近現代史』はどのように描かれているのでしょうか。
第2巻211頁では、条約の主な内容を大きく掲載し、参加国(外国)の情報も詳細に説明されているため、ソ連は講和会議に出席したが、講和条約には調印しなかったことが分かります。
また、樺太の一部(南樺太)や千島列島に対する権利の放棄についても詳細に記載されており、他の項目についても一覧で確認することができ、正解は「エ」だと導けます。
このように本編全16巻では学習しきれない項目も、『別巻 近現代史』を併せて活用することで知識をさらに深めていくことができます。
それでは、次の問題です。
サンフランシスコ平和条約によって主権を回復した日本は、1950年代から1960年代にかけて急速に経済成長を遂げました。
この経済成長に伴い、外国から新しい技術や文化が次々と流入し、生活様式も大きく変化しました。今回は日本の生活文化の中で、テレビに関する問題を取り上げます。
【2024聖光学院中学校】
アの選択肢は、ラジオ放送とのひっかけですね。1925年の大正時代にラジオ放送が開始されたことは、先ほどの大手塾の年号暗記カードにも収録されているため、これが誤りであると判断できる子は多いかと思います。
エの選択肢は、映画館の普及ではなく、インターネットの普及です。そして、テレビ番組の視聴率はその影響を受けて現在まで徐々に減少しています。ただし、この選択肢自体は少し難しいので、残りのイとウで正確に解答を判断できるようにしたいです。
まずは、イの選択肢です。テレビ放送の開始に関しては、本編全16巻では詳細に描かれていないため、『別巻 近現代史』第3巻34頁でその内容を見ていきましょう。
1953年にテレビ放送が開始され、イの選択肢のとおり、最初はプロレスが人気だったのが分かりますね。また、当時のテレビは非常に高価であったため一般家庭には普及しておらず、街頭テレビに人が集まっていたというのも分かります。
次に、ウの選択肢です。特に注意したいのが、家電の「三種の神器」に関する点です。
意外とこの選択肢を正解としてしまう子も多いかもしれませんが、その理由について、まずは本編第15巻122頁と217頁の記事で見ていきましょう。
テレビ・冷蔵庫・洗濯機が家電の「三種の神器」であることが分かります。続いて、『別巻 近現代史』第3巻78頁も見てみましょう。
どうでしょう。
年代の幅を広げてみると、家電の“三種の神器”は、1950年代後半に普及した「白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫」を指しており、一方でカラーテレビは、10年後の1960年代半ばに普及したクーラー、自動車と合わせて“新・三種の神器”と呼ばれるようになりました。また、“新・三種の神器”は、頭文字がすべて「C」で始まるため「3C」とも呼ばれました。
「テレビは三種の神器の1つ」と安易に覚えていると、こうした細かい問題に対応できないため、その時代背景をきちんと理解したいところです。
『別巻 近現代史』は、生活文化に関する情報もまんがの会話の中に自然と盛り込まれ、出来事の背景と一緒に覚えられるので、知識の確実な定着に役立てていきましょう。
それでは、最後にもう1つだけ過去問をご紹介します。桜美林中学校の2023年度の入試問題です。1980年代の実際の日米貿易交渉に関する問題です。ぜひ、お子さんと一緒に考えてみてください。
【2023桜美林中学校(2月1日午前)】
歴史の中でも経済史の分野です。中学入試では、このような会話文を前提にした問題がよく出題されます。 以下、この会話文に対する設問です。
この問5の「牛肉とオレンジの輸入自由化」は、中学受験の経済史の分野ではよく出題されます。ただし、本編全16巻ではこの出来事について触れられていないため、『別巻 近現代史』でこの問題を確認してみましょう。
1980年代にかけて、日本の製品はアメリカに多く輸出されました。その結果、日本は貿易黒字(輸出が輸入より多い状態)になり、一方でアメリカは輸入増大による貿易赤字になったというのが理解できます。こうした急激な輸出入の変化による経済的対立を貿易摩擦といいます。
特に、その原因となった製品として、第3巻108-109頁では日本車が壊されているシーンが強調して描かれています。
そこで、アメリカは自国の製品が売れるように、関税というものを日本製品にかけました。
関税とは、輸入品にかける税金のことです。これによって、日本製品が関税分だけ高くなるため、アメリカ国内の製品が売れやすくなるという仕組みですね。
また、アメリカは日本に対して農産物をもっと買ってほしかったため、日本の輸入規制についても交渉してきました。その結果、1991年には牛肉とオレンジの輸入規制が撤廃され、輸入が自由化されました。
このように、活字だけでは難しい経済史の論点も、第3巻110-111頁では視覚的に国の背景や各国の利害関係が描かれているため非常に理解しやすいです。
中学受験では、近現代史の経済に関する問題がたびたび出題されます。『別巻 近現代史』は歴史の流れと合わせて経済の仕組みも理解できるため、知識の幅をさらに広げるためにも積極的に活用していきましょう。
・おわりに
いかがだったでしょうか。
近現代史は、外国との関係が深く絡んでくるため、本編全16巻だけでは学習しきれない部分が多くなってきます。そのため、近現代史の問題を解く際には、必ず一緒に『別巻 近現代史』も活用し、より深い内容を理解することが大切です。
2022年から高校の必修科目に、近現代史を重点的に学ぶ「歴史総合」が導入されました。これに伴い、中学受験でも近現代史に関する出題は増えていくと考えられます。
ぜひ『別巻 近現代史』を中学受験の過去問対策に活用し、合格への知識をより確かなものとしてください。
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