恋愛するのは当たり前なのか?10代から恋愛観で悩んだ「デミロマンティック」のデミロマ会議さんが願う未来の形
みなさんは、「デミロマンティック」という言葉を知っていますか?
「内面的な絆やつながりを感じた人にのみ稀に惹かれる恋愛的指向」のことです。今回話を聞いたデミロマ会議さん(仮名)もその指向を持つ1人です。デミロマ会議さんは、平日に仕事をしつつ、SNSを中心にデミロマンティックの発信活動をしています。
「私のデミロマンティックの発信を見て、どんな恋愛的指向・性的指向であっても、疎外感や生きづらさを感じる人が1人でも減ってくれたらいいなと思っています」
そんな想いを持つデミロマ会議さんに、活動の詳細や発信するまでの経緯、未来の社会に願うことを中心にお話を聞きました。(聞き手:宮川周平/Shuhei Miyagawa)
伝える時の主語は「自分」
ーーデミロマ会議さんは、2020年にnoteで発信活動をスタート。TwitterやInstagram、Youtubeも活用されていますが、なぜnoteをメインにしているのでしょうか?
デミロマ会議さん:noteなら長文でも読んでもらいやすいなと思って選びました。最初は、デミロマンティックゆえの生きづらさや違和感、世間に対する疑問をとにかく伝えたいと思って書いていました。
そのうち、「こういう言葉があることは知らなかった」「ずっともやもやしていたけど、デミロマンティックっていう言葉があるのを知って、すっきりしました」といった声をいただくようになりました。
私が書いた文章が人のためになってるかもしれないと感じて嬉しかったです。それからはどういう記事があったら喜ばれるか、安心できるか、ということも考えながら書くようにしています。
ーーデミロマ会議さんは、文章を書く上で気をつけていることがあるといいます。
デミロマ会議さん:いろんな性的指向・恋愛的指向の人がいるので、どの人も否定しないように気をつけています。恋愛感情を持ってる人も否定したくないし、持っていない人も否定したくないですし。「違う」とか「良くない」という言葉は使わないようにしていますね。限定的な表現になってしまわないようにとか、誤解を生まないようにとか...誰が読んでもスッと入ってくるような表現を心がけています。
デミロマンティックを自認している人の中でもきっとひとりひとりグラデーション的に違いはあると思うので、「あくまで自分はこうです」って自分を主語として表現することが多いです。
10代の頃からずっと恋愛観に違和感
ーーデミロマ会議さんが発信を始めた背景には、デミロマンティックの情報が世の中には少ないから、という想いがありました。
デミロマ会議さん:私自身、10代の頃からずっと恋愛観に違和感を感じていたんですけど、その正体が何なのかが分からずにいたんです。10年以上もよく分からないまま生きてきたんですが、2年前くらいに「好きになる頻度が少ない」で検索して、初めてデミロマンティックっていう言葉に出会って、「私これだ!」ってなりました。
そこからはデミロマンティックについていろいろ調べました。そしたら、英語の記事を見つけることはありましたが、日本語で解説している記事や当事者による発信はほとんど見かけませんでした。それだったら、私が発信してみようって思って始めました。
私はたまたま「デミロマンティック」という言葉を見つけました。しかし、まだ違和感を感じている方もいると思うので、そんな方たちに届けたいという想いでいます。
ーーデミロマ会議さんが当時持っていた違和感とはどんなものだったんでしょうか?
デミロマ会議さん:1つ挙げるなら、恋愛の話が得意じゃないってことですね。みんな当たり前のように好きな人がいたり、好きな人の話をしたりしているなって...。
デミロマンティックの特徴に「人を好きになる頻度が少ない」というのがあります。私はその傾向が強くて、周りのペースについていけませんでした。だから、デミロマンティックを知るまでは、「自分は理想が高いのかもしれない」とか「好きな人を探さなきゃいけないのかな」みたいなことを考えながら生きてました。
でも、デミロマンティックという言葉に出会ってからは、「無理に好きな人をつくる必要なんてないし、私は私のペースでいいんだ」と思えるようになりました。
ーー他にも違和感を感じることはありますか?
デミロマ会議さん:「恋愛するのが当たり前」という考え方が変わってほしいなと思います。例えば「まだ結婚しないの?」という質問は、恋愛感情がない人にとっては苦痛に感じますし、恋愛感情がある人も、相手がいないことにプレッシャーを感じたりしていると思うんです。「恋愛してる人が偉い」「パートナーがいなきゃいけない」といった考え方が無くなっていけば、そういう人たちも生きやすくなるはずだって思っています。
これは私に限った話かもしれないんですが、デミロマンティックを理解してもらわなくてもいいんです。ただ事実としてそうなんだって受け止めてくれるんであればそれでいいなって思っています。
恋愛が人を判断する基準?
ーーこの記事を読んでくださる皆さんに伝えたい想いはありますか?
デミロマ会議さん:私がずっと言っているのは、「自分の幸せは自分で決める」という言葉です。「恋人はいない」と話すと、「かわいそう」とか「作ればいいじゃん」と言う人がいます。でも、自分の幸せは他人に評価されるものじゃないと思っているので、気にしなくていいんだよって伝えたいです。
すぐ社会が変わるわけでもないし、偏見の目もあるかもしれません。デミロマンティックの人に限らず、どんな性的指向・恋愛的指向でも他人に幸せを評価されるような場面に出くわすかもしれません。そんなとき、自分のことはちゃんと自分で認めてあげてほしいなって思います。
ーー最後に、デミロマ会議さんが願う未来像を聞いてみました
デミロマ会議さん:今、恋愛が人を判断する基準になりすぎていると感じています。メディアに流れているものは、男女の恋愛を中心にしたものがたくさんありますし。そうした多くの人の目に触れるものにこそ、多様性が生まれていったらいいなと思います。
それともう1つ、例えば10年後の未来を想像してみてください。私は、今と社会が全然変わっていなかったら悲しいなって思います。だから、「10年前は〇〇だったけど、今はそういうことないよね!」って変化している社会が理想だし、私もそうなるように行動して、下の世代の人が「社会は変えられるんだ!」って思えるようにしていきたいです。
執筆者:宮川周平/Shuhei Miyagawa
編集者:三井滉大/Kodai Mitsui
インタビューを受けてくれた人:デミロマ会議さん。10年以上セクシュアリティに悩み続けてデミロマンティックを知った経験を持つ。社会人で仕事をしながら、2020年よりnoteをメインに発信活動を開始。