自身も立派な“農家”へ。渡邉さんが今思う農業の魅力や、今後に向けたお話
千葉県山武市で「ソムリエファーム」を営む渡邉 剛さん。農園自体は幼少期から家族が経営しており、「いつかは自分もやることになるのだろう」と思いながら、一度は別の道を歩んでいたと話します。それが今では、自身も立派な“農家”へ。渡邉さんが今思う農業の魅力や、今後に向けたお話までを伺いました。
母が高級デパートで「ルバーブ」と出会って
そもそもの話になってしまうのですが、皆さんは「ルバーブ」を召し上がったことがあるでしょうか?おそらく、「食べたことない」という方や「そもそも何のこと?」という方までいらっしゃるかもしれません。
ルバーブは長さでいうと30〜40cmほどの葉物の野菜で、野菜の中では比較的珍しく、「葉柄」という葉と茎をつなぐ細い枝の部分を召し上がっていただきます。どちらかと言えば、ケーキ屋さんなどで赤い色をしたフィリングやジャムを見たことが無いでしょうか?食べてみると酸味が強く、ほのかな渋みも特徴です。
こんな珍しいものをなぜこの農園で?と聞かれれば、始まりは遡ること10年ほど前。うちの母が高級デパートで見つけたことがきっかけでした。当時900円もの値段で店頭に並んでいたそうで、「これはなんだ?」と目を奪われ、やがて「うちだって農家なんだから栽培できるんじゃないか」と挑戦するに至ったそうです。
モノづくりの道から野菜づくりの道へ
当時は長野県でやっと栽培が始まったくらいの時代でしたから、母は長野にも研修に行ったり、種を探したり…と奔走。いざ栽培を始めてみても、長野では赤く育つルバーブも、ここ千葉では緑が多くなってしまう。これは気候によるものなので仕方ないことでもあるのですが、栽培を軌道に乗せるまでも決して簡単な道のりではなかったそうです。
その頃の私と言えば、農業とは全く違う世界で、製造業に従事していました。精密機械を扱っていて、就農する直前はインドネシアの工場で副工場長をやっていましたからね。もちろん農業をやっている実家の様子はずっと見ていて、「いつかは自分も」と思ってはいましたが、結果的には予想より早く“その時”がやってきたと感じています。と言うのも、国内外と渡り歩いてきたときに、「食べ物ってどんな場所であれ、どんな時代であれ、永遠に続いていくものなんだ」と実感したんです。それに対して自分が扱っていた精密機械の類は、新しいものが出たら売れなくなったり、時代の中で淘汰されていったり。もちろんそれはそれで面白さがあることは重々感じてきました。ただ、食べ物に関わるということの面白さ、壮大な世界観みたいなところに、このタイミングで気づいたんです。
就農6年目、自分なりの模索は“堆肥”から
いざ農業のことを勉強し始めてからも、本当に面白いと思えることが多く、そこから走り続けて今日までやってきました。就農6年目ですかね、あっという間です。最近では少しずつ自分なりの取り組みも推進していこうと、堆肥の工夫を始めました。それまでは牛糞を堆肥に用いていたのですが、今度は魚のうろこを入れてみたりして。リン酸が多いと言われているのですが、おかげでピーマンやナス、トマトの実りが良くなりました。昨年からは酒粕を採用しています。近所に仲の良い酒蔵さんがいて、産業廃棄物になると聞き、堆肥の原料としてもらうことにしたんです。酵母やアミノ酸が多く含まれていると言われており、葉物野菜にもいい影響が出るのではと楽しみにしています。これからも「ソムリエファーム」が長く続くために、試行錯誤は続いていくと思います。ただ、収穫体験にやってきてくださる方もたくさんいらっしゃいますし、そういった中で農業や農作物の魅力を知ってもらえたら嬉しいですね。