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バリ島を守るため闘う バリ人女性に出会う
先週、1人のバリ人女性に出会った。
日本よりもさらに男社会だと思っていたバリ島で、
この島を守るために真剣に「闘っている」
こんなバリ人女性がいたんだ!ってワクワクして
そしてすごく考えさせられた。
Ni Luh Djelantik
彼女は、2024年からインドネシア地方代表議会議員を務めている。
Stephane Senseyというバリ島在住の写真家の
展覧会があると、友人に誘われて行ったのだけど、
とてもおしゃれな店内でワインを飲みながら話を聞く、というトークイベントだった。
なんだかちょっと場違いな感じもしたけど、彼の写真集「BALI」をめくったりしながら始まるのを待った。
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ディジュリドゥと歌の素敵な演奏の後、
まず写真家が、最近のバリのオーバーツーリズムに警笛を鳴らすところからトークは始まった。
特に人気のあるチャングーやウルワツ地区ではお店やホテル・ヴィラの建設が止まらない。
渋滞も深刻で、移動がかなりストレスになっている。
元々、バリ島の観光資源といえば
美しい自然やバリヒンドゥーの文化だったのに
今やビーチ沿いはビーチクラブだらけで
ここがバリであろうがなかろうが関係なく
地中海のパーティ島・イビザ化しつつある。
最近チャングーのさらに北には
まるで自治区?というようなnuanu cityも建設中↓
もちろんそれによって楽しみは増えているし、
観光客が増えれば、地元の人も潤う。
でも増え過ぎると、マナーの悪い人も出てくるし、
現地の生活にも支障が出てくる。
今の日本とも似てるかもしれませんね。
そんなこと言う私だってこの島では外国人だし、
元々田んぼだったところに建てた家に住んでるし、
若干ツーリズムを催す記事まで書き始めている、、。
(オーバーツーリズムに貢献はしてないと思うけど)
観光や移住人気を背景に
土地や家賃は上がり続けている。
つい最近も、家の相場を見てびっくり。
ここ3年くらいの間に倍以上になっている。
もしかしたら今までが安すぎたのかもしれない。
いろいろな不便さを許せるくらいバリ島が大好きな人にとっては、確かにありがたい設定だった。
(そうじゃない人にとっては、もちろんそんな値段でも住みたくなかったはず)
いろんなものがそろい、いろいろと便利になるにつれて、少しづつ値段は上がっていた。
住みやすくなったからねぇと理解できる範囲内で。
「素敵なプール付きヴィラ」なら、
南国ならではのプライスレスな価値があると思う。
でもそれはお金持った人にしか手に届かない。
一緒に、普通の家も値段が上がっているのだけど、
値段が合ってない違和感を感じてしまう。
それなら日本の地方都市の方がコスパがいいんでは?
完全にバブル。
こんな日が来るとは予想していたけれども…!
彼の写真集の中にあるバリは美しい。
彼の故郷のフランス・バスク地方でも、昔パリジャンが美しくて安いと土地を買い漁って、地元の人が住めなくなったそう。
これも、今の日本も他人事ではないですよね。
円安だし海外旅行に行くのは割高、
国内旅行も、インバウンドの外国人観光客でいっぱいで、ホテル・旅館代も高騰しているし、土地や不動産物件も買われています。
(しかも、外国人名義で!インドネシアは外国人名義にはできない)
話が脱線しましたが、、
バリを愛し、長く住んでいる1人として
今なにか手を打たないと、失うものが多すぎる。
この写真集にあるようなものを残したいというのが
彼の想いでした。
そして、マイクはNi Luh Djelantikへ。
力強くゆっくりと話し始める。
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彼女は、バリのバトゥール山の近くに生まれたが、
Djelanti(=戦士)という名前の通りの血を引くという。
フランス人の旦那さんを持ち、スミニャックで皮のサンダル屋を営む経営者でもある。
同じくバリの観光開発の行き過ぎを懸念している。
明るく素朴なバリの人々が日々ていねいに暮らし、バリヒンドゥーの文化を受け継いでいたからこそのバリ島が、ただのパーティーアイランドになりつつあるのを見過ごすわけにはいかない!
このままでは開発され尽くし、挙げ句の果てに飽きられた時には大事なものを無くしている、自分の島のそんな未来は見たくないと。
なぜ地元のバリ人が
家賃が高過ぎて仕事がある地域に住めず、
1時間もかけてバイク通勤しなければいけないのか。
(日本の満員電車も大変だけど、バイク通勤だって毎日1時間となれば大変だ)
生活は豊かになったし、得ることもたくさんあった。
でも今のバランスはおかしい。
Senseyのようにバリを愛するよい外国人もいるけれど、ビジネスのことだけを考えるような外国人(だけではないと思うけれど)に、
これ以上好き放題に土地を開拓されたりして
地元の生活の質が下がるようなことがないよう
彼女は今年から議員として活動するようになり、
この日も朝から男たちに囲まれ会議に出席してきた。
影響力を持って問題を解決していくには、法の力で制すしかない!というのが彼女の結論だ。
いろいろな人のビジネスにとって壁となる彼女は
たくさんの敵を作り、自分を訴えようとする人もいるとも話していたが、彼女の決心は固そうだった。
細かいことは私には知る由もないけれど、
途中感情が溢れて涙をこぼしながら話す彼女に
こちらも深く考えさせられた時間でした。
素敵な写真を見ようと軽〜い気持ちで出かけた私たちは、かなり真剣勝負なパンチをくらった、、笑
成長する過程で失うもののことは、
他人がいくら伝えても経験しないとわからない。
日本や欧米、たぶん中国も知っている。
経験した親が心配して口出ししても、失敗するまで子どもはうるさいと思うだけなのだ。
どうにもできないと思っていたこの島の憂い。
みんなに分かってもらおうとするのは無理だから
彼女は、先に手を打てるように動いている。
とにかく、こんなに真剣に公で闘っているバリ人女性がいることに嬉しくて心強いし感動したし、知れてすごくよかった!
そして単純に応援したい!と思ったので、
せめてこの話を書いてみました。
ちょっと小難しい話になってしまったけれど、
がんばってほしいです。
私は彼女の言う「よい外国人」になれているだろうか。
この島に住まわせてもらっている身として、せめてそうありたい。
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