マガジンのカバー画像

novels

4
自作の小説の供養。
運営しているクリエイター

#恋

つながれ。

つながれ。

ふと青空を見上げると、白い雲を照らす太陽光の幻想的な美しさに息を飲むことがある。
そんなとき、この世界は作り物なのではないかと思ってしまう。
今自分が立っているのは小さな箱庭の中で、神のような存在が日々空を塗り替えている、そんな気がしてくるのだ。

雲の隙間から太陽の光が筋となって差してくる、その幻想的な光景を、人は「天使の梯子」と呼ぶ。

学術的には「薄明光線」と呼ばれる現象らしいけど、「天使の

もっとみる
呼ばれ、惑う。

呼ばれ、惑う。

「月が怖いの。満月を見上げると、まるで誰かに呼ばれているような気がして……」

大学最後の夏、学生らしいことがしたくて、友人たちと河原で花火をした日。熱気が重くのしかかるような熱帯夜だったと思う。

年甲斐もなく小学生のようにはしゃいだ帰り道、駅までの道を辿りながらふと夜空に浮かぶ満月を見上げていたときだった。
隣を歩いていた彼女がポツリに言ったのだ、「月が怖いの」 と。

私たちの祖先にとって、

もっとみる