メガネ初恋
私の初恋は、メガネの彼。
彼と過ごせたのは、たったの3ヶ月。彼とは公園で知り合った。私がこけて泣いていたとき、優しく手を差しのべてくれた。ゴツゴツと硬い手だった。
「お仕事はなんしよんの?」
「もうしよらんけんなぁ。昔は木を剪定しよったよ」
「そうなん!? うちの木も切ってほしかったわぁ」
「この公園の木や道路の木も切りよったんで。今はもう、掃除が大変やっちゅうことで、伐られてしまったけどなぁ」
まだ残っていたとある家の庭木を一緒に見に行ったこともあった。まだ小さい頃、綺麗に切り揃えられていたのをぼんやりと思い出す。
年老いた彼は、最期の時を、長く亡き妻と暮らした自宅で過ごしたいと退院し、元気のいいときだけ公園に来ていたのだと、そばでこっそり見守っていたというお孫さんから後で聞いた。葬儀に参加したとき、あの老眼鏡が納められていた。
「形見に取っちょかんの?」
「おばあが贈ったメガネやけん、一緒に入れちゃりたいんよ」
「そうなんや。相棒やもんね」
初恋の老眼鏡の彼は、初恋の人のもとへと旅立った。
(447文字 37文字オーバー)
再び参加させていただきます。
時間がないので字数調整が間に合わなくてごめんなさい。
大分弁を使ってみたよ。
本当は、別の物語も考えていたんだけど、それは番外編でタグをつけずに気が向いたらまた書けたらと思います。
たらはかにさん、よろしくお願いいたします。
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