「定」を含む140字小説5編
今月「140字小説コンテスト」に応募した小説をまとめます。
「定」を含む140字小説5編
1
安定した職に就けと親は言う。確かに僕の本職ははっきり言って儲からない。真夏に暑い服を着なければならないし、周りに仲間はおらず、責任重大。知らぬが仏なこともある。でも、僕はこの仕事に誇りを持っている。子どもたちに少しでも希望を与えられる喜びを味わえる、公認サンタクロースという職に。
公認サンタクロースというお仕事があるそうです。大変な、でも素敵な職業だなぁと思いました。
2
人は限定という言葉に弱い。もっと自分の好みに忠実に選ぶべきではないか。せっかく選択の自由が与えられているというのに、期間限定だの限定10食だの、限定という言葉に踊らされている者のなんと多いことよ。私は負けない。いつものさばみそ定食を……「すみません。冬季限定、すき焼き定食を一つ」
期間限定に弱い私。こういうこと、ありますよね。
3
趣のある小料理屋にやって来た。雨の中わざわざ来た甲斐があるというものだ。一定の間隔で鹿威しの音がする。心が安らぐ。「女将さん、鹿威しのいい音が響いていますね」「そんな物うちにはございません」「でもほら、この音」「うち雨漏りが酷いんです。竹の音は、竹の器を主人が作っている音ですね」
無理やり感が否めませんが、悪しからず。
4
出版社に勤めて三ヶ月。そそっかしいところがあり、先日は校正ミスをしてしまった。落ち込んでいると、先輩が定規をくれた。定規を置いて校正すると、見るところがずれずに済むという。今日は早速その方法で取り組んでいる。「八兵衛さん、集中しているところ悪いんですけど、そのゲラ先月の分ですね」
定規って、計るだけでなく、紙を切ったり、一行一行大切な書類のチェックをするのに使ったり、何役もこなしてくれる優れものなんです。
5
「ごめん、やっぱり残業確定。できるだけ早く帰る」夫からのメール。今日は結婚記念日。今日こそ定時で帰ると出ていったが、案の定残業。でもいいの。彼の愛は伝わってるから。ピンポーン。「宅急便です」夫が何か頼んだのかしら。「はい」「お届け物です」「どうして」「サプライズ。約束果たしたよ」
1~4は小説といえるのかどうか…一年ぶりの参加で、リハビリがてら書きましたが、5はやっと小説らしく書けたかな?と思います。
今月の文字「定」を使った140字小説5編をお送りしました。
まだ募集していますので、みなさんぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
こちらのアカウントで、素敵な作品の数々が掲載されています。
たった140字でこんなにも奥深い世界が広がるって、素敵ですよね。
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