「ラストマイル」の意味を探しに
「物流の2024年問題」。一度は見聞きされた方も多いのではないだろうか。私は昨年12月10日時点で、恥ずかしながら多少見聞きしたことがある、程度だった。映画『ラストマイル』の公開を知る前日までは。
物流の2024年問題について、国土交通省 東北運輸局のホームページでは下記のように説明されている。
全国トラック協会のホームページに、問題と解決案がわかりやすくまとまっている。
執筆、制作されたのはもっと前だが、奇しくも2024年に公開され、流通システムとそれに付随する現代社会の問題とまっすぐ向き合って作られたであろう作品、それが映画『ラストマイル』だと思っている。
私は残念ながら試写会に落選したため、まだ『ラストマイル』の全容は知らない。各種宣伝情報のみから推測し、私が現時点で想像するこの作品の魅力を、ネタバレ一切なしで語っておきたい。
映画『ラストマイル』基本情報
「ラストマイル」とは
映画の公式サイトでは「物流においてお客様へ荷物を届ける過程の最後の区間を表す」言葉として説明されている。アドバンスリードの運営するホームページなどで詳しく説明されている。
公開日
2024年8月23日(金)
上映劇場
下記参照。
概要
届いた荷物は爆弾だったーー。
11月、ブラックフライデー前夜。世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがて、連続爆破事件へと発展していく。
誰が、何のために仕掛けたのか。
・監督:塚原あゆ子
・脚本:野木亜紀子
・プロデューサー:新井順子
・主題歌:米津玄師「がらくた」
この最強チームが贈る、極上のノンストップ・サスペンスエンタテインメント。
(参考)
公式サイト
予告動画
ストーリー
下記参照。
登場人物
下記参照。
映画『ラストマイル』の魅力(予想)
1 ストーリー・演出・プロデュース
公式は、後述の「シェアード・ユニバース」を全力で推している。好評を博したTBSドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)から続く世界線の延長線上の『アベンジャーズ』的な作品、という点だ。私はもちろん、この「シェアード・ユニバース」をとても楽しみにしている。
しかし、スタッフ、キャストは言う。ドラマ出演者は「あくまで友情出演です」と。この作品は「完全新作」であり、そのなかでドラマの登場人物たちが生きていて、職務を全うしているだけなのだと。
そのストーリーがいかに面白いか。キャストたちは宣伝のなかで、とにかく野木亜紀子の脚本のよさを推す。
そして、「宅配荷物が爆発する話」の発案者であり、脚本を映画として成立させ、音楽、演技、カット割りなど、細やかにディレクションしまとめあげる塚原あゆ子の演出力。過去の数多のドラマや映画から、彼女の演出力は折り紙付きだ。ぜひ観てその目で確かめてほしい。
これらを実現すべく、登場人物たちのキャスティング、各種調整を行った新井順子のプロデューサーとしての手腕。よくぞこれだけのメンバーを集め、調整したものだと思うし、コロナ禍がまだ終息していなかった(未だにしていないが)なかで、撮影場所などの調整も大変だったと思う。感謝しかない。
2018年から築かれたチームワークにより、彼女たちの叡知が結集し、それらを実現すべく総力をあげて作り上げた全スタッフ・キャストにより、この作品がもうすぐ世に送り出されるのである。受け取れる喜びを噛み締めている。
2024年に公開される映画に「物流」をテーマにするというのが、これまで社会問題を大切に扱いながらエンタテインメントに昇華してきた彼女たちならではだと思う。ただ、野木亜紀子は雑誌の取材で、必ずしも物流映画ではないと語っていた。物流に限らず、社会のしわ寄せで末端の人が苦しむ構図は、あらゆる業界に言えることだと。その問題に他ならぬ私たちも加担しているのだと。(詳細はオレンジページ『オレンジページ』2024年 9/2号 p.90-91参照。)
『MIU404』の4機捜(第4機動捜査隊)志摩一未を演じた星野源。彼は、自身がパーソナリティーを務めるラジオ「星野源のオールナイトニッポン」の昨夜放送でこのように語っていた。「自分の生活に直結しており、生活にフィードバックできる」「観終わった後に語り合いたくなる」物語であると。
覚悟をもって本作を観に行き、楽しむだけでなく、きちんと考え、生活を見つめ直したいと思っている。
2 登場人物
星野源は、昨日のシェアード・ユニバース・プレミアでこのように述べた。「この作品は市井の人々が主人公」だと。
主人公の満島ひかり演じる舟渡エレナはショッピングサイトの関東センター長。岡田将生演じる梨本弘は同じショッピングサイト関東センターのチームマネージャー。他に、運送会社羊急便の社員、羊急便の委託ドライバー、シングルマザーなどが登場する。
彼らはみな、私たちと同じ、日本の街で暮らす普通の人々だ。様々な境遇に置かれた彼らは、各々の仕事に一生懸命で、一生懸命に日々を生きている。その生きざまが魅力的なのだと、関係者たちは語る。キャストはみな、自分の演じた人物をとても愛している。それが宣伝の様子からよく伝わってくる。愛がキャラクターを育て、彼らの体当たりの演技がキャラクターを生かす。
まだ宣伝動画でしか知らない本作のメインキャラクターたちが、どんな風に働き、生活を営んでいるのか。6年、4年を経て帰ってきたドラマのキャラクターたちが、その間どうやって生きてきて、今があるのか。彼らから片時も目が離せない。一言一句聞き漏らしたくない。
3 シェアード・ユニバース
公式が推している「シェアード・ユニバース」。『アンナチュラル』『MIU404』の世界線で生きている『ラストマイル』のメイン登場人物たち。3作品の世界がどんな風に交わり、関わっていくのか。『MIU404』の大大大ファンである私は、たとえ友情出演でもとてもうれしく楽しみにしている。また4機捜を始めとする彼らに4年越しに会えるのだと思うと、ファンにはたまらない。
しかし、野木亜紀子はXでこう語っている。
とても豪華で、初見でもちゃんと楽しめるように作られていると、他のスタッフ・キャストも語っていた。ドラマを観ていないし、間に合わないから……。そう諦めなくて大丈夫。ドラマを観ていれば別角度からも楽しめること間違いないが、純粋に『ラストマイル』単体で楽しめることも保証できる。塚原あゆ子×新井順子×野木亜紀子チームをどうか信じてほしい。私に騙されたと思って、足を運んでいただけたら。
多分、観終わったとき、ああ、楽しかった、とはならない。ずしんとくるものがあると思う。エンドロールを観ながら米津玄師の「がらくた」を聴くとき、私は何を思うのだろう。
いろんな意味で怖くもあるのだ。突きつけられる現実を見てしまったら、世界の見え方は変わってしまうだろう。見て見ぬふりをしていた、見たくなかった、知りたくなかった。そんな物事に向き合わざるを得なくて。
でも、それらは確かに「ある」のだ、今この世界に。いや、すぐそばに。物流はもちろん、様々な問題を抱える社会で、日々を生きるなかで、私たちが直面する困難に通ずるものがあるはずだ。気づかないことで精神を保ってやり過ごす。自衛はとても大切だ。ただ、映画を観に行くだけの余力がもしあれば、受け取ってみるというのはどうだろう。この作品から持ち帰れるものは、重荷だけではないはずだ。
私は、「ラストマイル」というタイトルに制作陣が込めたメッセージを知りたい。すべての謎が解き明かされるときに浮かび上がるものを、劇場で目の当たりにしたい。
「ラストマイル」の意味を探しに、私は劇場に向かう。