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すーこ
2024年7月5日 23:55
目次 手紙には、「スミレさんへ」と書かれていた。二つに折り畳まれ、宛名の上には、あのときの種。あれから何年経つだろう、私のことを覚えていたんだね。そして、まだ光る種を持っていてくれたのね。お母さんと交換日記を書いていた頃より小さくかっちりした筆致、「スミレちゃん」ではなくさん付けになっているあたりから、あの子がもう立派な大人になったことを実感した。 ときどきどうしてるかなって様子を見に行くと
2023年4月23日 17:24
目次 透明な手紙の香り。それは五月の風に乗って、かすかに薫った。「きれいな茜色だなぁ」「え?」「え?」 それが、藍さんとの出会いだった。「ごめんなさい。独り言でした。お恥ずかしい」「いえいえ。思わず口から漏れるほどに、たしかにこの空は美しいですよね」「そうなんですよ! 空や自然が好きなんですよね。この茜色の空も綺麗で好きだ。木々や家々が黒々としていて、その対比も含めて美しい。燃