自分のことがいちばんわからない
お疲れ様です。「自分のことを一番よく知っているのは自分」という言葉、どこかで一度は耳にしたことがあるのではと思います。しかし、本当にそうなのでしょうか?
私たちは本当に自分自身を深く理解していると言えるのでしょうか? 心理学の有名な現象に「書字スリップ」があります。これは、ひらがなの「あ」を速く書き続けていると、無意識のうちに「お」になっているものです。この現象は、心理学の客観的な分析の意義を支えるものであり、つまり自分のことは自分が一番よくわかっている、という認識の再考を促すものとして取り上げれらます。自分の頭の中では「あ」を書いているのに、なぜか「お」になってしまう、自分で制御できないのはなぜでしょうか?どうしてそうなっているのか、自分だけで知ることは難しいでしょう。
人間の自己認識は、客観的なものではなく、主観的なものであるため、必ずしも正確ではない、ということも、言えるでしょう。前述の「書字のフリップ」のように、私たちは、自分の無意識の行動や思考に気づいていないことが多いです。さらに、人は常に変化するため、過去の「自分」と現在の「自分」は異なり、まるでテセウスの船のように、果たして同じなのか、よくわかりません。
では、私たちはどのようにして、自分を知ることができるのでしょうか。自分と自分を媒介するなにか、例えば、友人との会話や日記を読み返したときなど、自分をいろいろな角度から映してくれる鏡があれば、何か手がかりが得られるでしょう。
そうはいっても、おそらく、自分が何者なのか、わかることはないでしょう。しかし、それは知ることをやめるというより、継続の意味合いが強いです。そして、「無知の知」を自覚するという、哲学的な意義も含みそうです。