見出し画像

作り話に騙され、再生数に協力させられていることに気づかない人々。❝嘘松❞

 以前クックパッドブログで紹介したことがありましたが、これと全く同じパターンのサムネと同じ作りのチャンネルは無数に存在します。微妙に内容を変えていますが、演出や動画の作り方は全く一緒です。

 誰かが一つのフォーマットを決めて、それに沿って作られた動画とそれを配信するチャンネル。バリエーションは無限。いかにもそれらしい設定と、人心を掴むシナリオですが、一種のステレオタイプを上手く書き換えているように感じました。
 再生数を観れば明らかなように、物凄く儲かっています。そういう意味で技術は確かなようですが、観ている人たちのほとんどはこれを実話だと思っているのです。作り話だと気づかずに。報酬は企業から受けて、騙した人から搾取しているわけではないから詐欺行為には当たらない。上手い方法です。なぜこれが作り話だと気づくかと言えば、話が出来すぎていて、安っぽいTVドラマのシナリオのようにウソ臭いから。
 そもそもなぜそんなに事実関係や時系列を細かいことまで記憶してスラスラ語れるのか不思議でしょうがないです。そんな人はほぼいない。(嘘だと感じる話は大体これに該当します)

60代厳しい老後を生き抜く「まさ美」 チャンネル登録者数 3.79万人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます

 久しぶりに見つけたこの動画のサムネ。基本的にこれをやっているチャンネルのアカウント主は女性(という設定)です。でも、元グラフィックデザイナー(クリエイター)だった私から見て、この作り方は女性的に思えない。男性が作ったャンネルのように感じます。果たして60代の女性がこんな動画とチャンネルを作るでしょうか。
 クックパッドで近い年齢の主婦たちが友人知人であることから、なんか違うなあと疑問を覚えて色々検索したところ、同じような動画チャンネルが沢山出て来たのです。

 例えば上の動画のタイトルで画像検索すると、すぐに以下の動画が出て来ました。これは別のチャンネルですが、背景画像と文字の置き方が似ていませんか。チャンネルを開いて既存の動画リストを見れば、もっとそのことが良く分かるでしょう。チャンネル自体が似ているのです。
 まるで同じ人が作ったように。

60代未亡人『富子』の山あり谷あり人生 チャンネル登録者数 2.92万人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます

 主役の設定は微妙に変えてありますが、個性に違いはほとんどありません。同じ人が違う名前でシナリオを書いて動画とサムネを作っているようにしか見えません。そしてそのセンスから感じる作り手は女性ではない。あまりにもチャンネルが機械的に作られ過ぎていませんか。

さらにもう一つ見つけました。以下です。

難病持ちで60代一人暮らしのトモ子 チャンネル登録者数 7810人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます

 面倒なのでこれ以上は探しませんが、こういったチャンネルが無数にあります。そしてそれら全てが同じように大量の再生数を稼いでいます。犯罪には当たらないかも知れませんが、それだけの人々が明らかに騙されているのです。恐いとは感じませんか。

 実を言えば、私自身も一番最初に観たこの関連の動画を本当の話だと思い込んで続きを観ていました。ところがある時ふと(ちょっと現実的じゃない)と疑問を覚えたのです。一瞬感じた違和感から、どんどん怪しい証拠に気づいて行きました。そして検索しまくった結果、この記事のような結論に達したというわけです。

これがTVや雑誌などでクローズアップされたことがあるかは分かりませんが、今も存在するのは公にはなっていない証拠。

 これらを運営する為に最も重要な能力はシナリオです。そのことは動画を一つ観れば分かります。たぶんほとんどの人が動画の字幕を読めば引き込まれて行きます。そういうモノローグが延々と流れます。そしてTVドラマのように動画は次々と続くのです。不思議なくらい毎回びっくりするような展開でストーリーは進みます。
 書いている人は、そういう風に自分の書いた話を多くの人に信じ込ませることで自分の欲求を満たしているのかも知れません。


(以下は、2022/10/11にクックパッドブログで書いた内容からの抜粋)

嘘松(うそまつ)とは、実話と称して荒唐無稽な「体験談」をSNSに投稿する人物を揶揄すること。

 昔ネットで有名になり、ドラマ化映画化までされた『電車男』がホラ話だったということを知る人はどれくらいいるでしょうか。当時のことに詳しい人ほど、あれを実話と考えている人はいないそうです。

 嘘松(うそまつ)とは、実話と称して荒唐無稽な「体験談」をソーシャル・ネットワーキング・サービスに投稿する人物を揶揄するインターネット・ミーム。この名称は、2015年から放映されたアニメ『おそ松さん』に由来するという。
 J-CASTニュースやAll Aboutによれば、「嘘松」というインターネット・ミームが広まったのは2016年頃だという。一説によると、非現実的な「目撃談」をTwitter上で発信した人物がいて、そのアカウントが『おそ松さん』のファンだったことから「嘘松」という表現が誕生したのだという。
 やがて、あまりにもエキセントリックでいかにも作り話っぽかったり、真偽が定かでなかったり、明らかに大きな誇張があるような、多くの人からみて到底信じられないようなエピソードを、実話や体験談・目撃談として発信する利用者や、その発信そのものを「嘘松」と呼ぶようになった。

Wikipediaより

パソコンではなくスマホからネットを始めた人たちは、知らない人が多いかも知れませんが、ネットには作り話が多いです。

 インチキな商売の広告や、❝桜レビュー❞という嘘の商品評価を書く商売も現実に存在しますが、ただ単にSNSでバズることと創作欲求を満たす為だけに書かれた嘘も数多くあります。勢い良く書かれている嘘は、読んだ時にはすぐ嘘と見抜けないことも多く、後からアレはホラ話だったような気がするといったこともあります。

 以下に挙げた4つのチャンネルは恐ろしく似通っています。そして想像以上に人気があり、収益も上げているようです。コメント欄に現れる人たちはストーリーを現実だと思って、1ミリも疑いを抱いていないように見受けられます。しかし私にはこれらが作り話にしか思えません。

さちえの暮らし〜60代夫婦の年金生活〜チャンネル登録者数 1.82万人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます
60代厳しい老後を生き抜く「まさ美」チャンネル登録者数 2.91万人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます
60代うめの暮らしチャンネル登録者数 4680人
タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます

久しぶりに以下のチャンネルを見たら別のタイトルに変わっており、古い動画はそのまま残っていたので、私の考えていたことが正しかったと証明されました。おめでとうございます。

理由は分かりませんが、ここは全く別の企画のチャンネルに変わっていました。
下にスクロールして古い動画を見ると画像のようなタイトルの動画が出て来ます。
厳しい老後を生き抜く「さち子」は仮の姿だったということが分かります。

タイトルまたは画像をタップするとチャンネルが開きます


 一銭も騙し盗られていないのに、この存在を許せないのは私の心が狭いからなのでしょうか。それとも❝噓つきは泥棒の始まり❞が示す通り、人を騙して荒稼ぎする手法は倫理的に問題ある行為なのでしょうか。
 一つ言えることは、もしもこれが虚構だということが明らかだったらこんなに再生数を稼ぐことはできないだろうということです。次々と続きを再生して、コメント欄に応援の言葉を書くお人好しな人々は、虚構の主人公に共感して応援する自分に酔っています。彼らは被害者でしょうか。それとも人生に一服の清涼剤を与えられた幸福な人々なのでしょうか…

<(ↀωↀ)> May the Force be with you.