絵本の蔵書(その7)「銀河鉄道の夜」「月夜のみみずく」他
星祭りの夜、銀河鉄道に乗ったジョバンニは、天の川をめぐる幻想的な旅をする。宮沢賢治の童話の世界を油彩画で描いた愛蔵版。
宮沢賢治は好きですが、「銀河鉄道の夜」は救いのない話に感じるので、あまり好きではありません。親しい人間の死について自分の心を納得させるための幻想のようであり、詩「永訣の朝」にも通じる内容だと思います。宮沢賢治の暗鬱な世界観が最も色濃く表現された物語ではないでしょうか。
たぶんそれがオマージュ作品である松本零士の漫画「銀河鉄道999」にも表れていると感じます。作者独自のSFファンタジーでありコメディ要素もありますが、シリーズ全体として生活の貧しい人々の生活感や裕福さへの憧れ、厳しい現実などが度々描かれます。
海外ファンタジー作家・ジェイン ヨーレンの絵本です。全ての紹介で記載してはいませんが、評価の高い絵本ばかり集めた記憶通り、蔵書してあるのはコルデコット賞受賞作が予想以上に多いです。この本もそうでした。
繊細なスケッチ画に水彩で描かれた非常に芸術性の高い1冊です。各ページが、まるで映画のワンシーンを切り取ったような素晴らしい視点で息を呑みます。秀逸なカメラワークと言い換えても良いかと思います。
まるで詩のような文章を素晴らしい翻訳が再現しています。ジェイン ヨーレンは本業であるファンタジー小説も大人向けのとても格調高い作品です。
悪いまほう使いに白鳥にされてしまった白鳥の女王をすくうため、永遠の愛をちかった王子..... チャイコフスキーによるバレエ音楽の傑作が、リスベート・ツヴェルガーによってハッピーエンドにまとめられ、『世界がもし100人の村だったら』の池田香代子の新訳でよみがえりました。
作者が悲しい結末が嫌で新しい終わりを描いていますが、正直なことを言うと、その最後の1ページは不要です。気持ちは分かるけれど、悲劇は悲しい運命を描いているから作品として光り輝くのです。
悲劇にハッピーエンドは不要です。
子どもがいない王さまとお妃さまのもとに、待望の女の子が生まれました。そこで、王さまは盛大なお祝いをひらき、うらないおんなたちを招待します。招待されたうらないおんなたちは、次々に王女に贈りものをします。ところが、ひとりだけ招待されなかったことを恨みに思った13番目のうらないおんなが「ひめは、15になったら、つむにさされて、たおれてしぬぞ!」と叫びます。うらないを恐れた王さまとお妃さまは、姫をお城の塔にとじこめてしまいます。(福音館書店)
絵本を選ぶ楽しさは、レコードのジャケ買いに通じるものがあります。表紙を見て「これだ!」と欲しくなる。本書もそういう1冊です。そしてその表紙の魅力に違わぬグリム童話らしさが全編にあります。
ロッタちゃん5才の誕生日。ほしかった自転車を買ってもらえなかったロッタちゃんは、お隣から大人用の自転車を盗みだしました。(偕成社)
『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』として映画化されていますが、私は自分の持っているケストナー原作の映画『点子ちゃんとアントン』を記憶の中で混同してしまいます。
「絵本の蔵書」は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。