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“普通の人”による事業創造をオススメする3つの理由


目まぐるしく市場環境が変化すると同時に、ライフスタイルや価値観がますます多様化する現代において、皆さんは企業内の事業創造は「誰」が担うのが良いと考えますか?

・経営陣肝いりで取り組む会社(サイバーエージェントのAbemaTVは藤田社長が自ら牽引しています)、
・既存事業のハイパフォーマーが人事異動でアサインされる会社、
・新規事業と言えば●●さんのような事業立ち上げ人が歴任する会社、
・意気の良い若手が事業提案に挑む会社……

様々なケースを見聞きします。


もちろん唯一無二の正解はありませんが、生み出した新規事業の成功、その先の事業を生み出し続ける土壌づくりを考えるならば、私は「普通の人による事業創造」をオススメしたいと思います。

自社リソースの使い方を心得ている経営陣や、ビジネスに精通しリスクマネジメントに長けた特別な人材ではなく、なぜ「普通の人」が良いと考えるのか。

以下、3つの理由を挙げて考えていきます。


1.適任者がメインストリームにいるとは限らない


普通の人が事業創造をした方がいいと考える一つ目の理由は「適任者がメインストリームにいるとは限らないから」です。

事業創造の適任者、つまり


・解くべき課題を発見し、まだ何もないところから新たな価値を生み出せる人材 や、

・先を読む能力よりも、見通しが悪くてもエイヤッと前に進む能力を持った人材 は

既存事業のハイパフォーマーの要件とは異なります。


新規事業を一部の人の特権にせず、“普通の人”が行うものとして門戸を開くことで真に事業創造の適任者を見つけることができるのです。

新規事業創造の組織的な施策を考える経営や人事からは見えにくいところに
新しいことにウズウズしていたり、ふつふつした思いを抱えた挑戦者が潜んでいます。

私たちの実体験では、組織の中心よりも離れたところに眠っていることが多いです。

「変革は辺境から生まれる」の言葉通り、「イノベーターは辺境に眠って」いるかもしれません。



2.なるべくたくさんの人が、なるべく遠くの「不」を探索した方がいい


普通の人が事業創造をした方がいい二つ目の理由は、「なるべくたくさんの人が、なるべく遠くの”不”を探索した方がいいから」です。

ベストセラーとなった経営書「両利きの経営(チャールズ・A・オライリー著)」では、企業がサクセストラップを抜け出し長期的に繁栄するためには、既存事業を磨きこむ「深化」と新しい事業の種の「探索」を同時に行う必要があると述べています。


「探索」はイノベーションを生むことを狙って行うわけですが、その際、近い範囲の探索ばかりをやっていてもイノベーションは生まれません。(近い範囲の探索はもう一通り誰かがやっています)

既存事業に対する固定概念や先入観から離れて、できるだけ遠くに探索のアンテナを広げることで見つけた「不」が自社がこれまで深化させてきた技術やリソースと出会うことで思ってもみないイノベーション、新たな事業の種は生まれるのです。

ある大手商社では、自身が所属する事業領域に関する新事業提案はNGとしているといいます。

すでにプロとして精通していて問題点も見えやすい近い領域は本当の意味では探索できず、「普通の人として」だからこそできる探索があるということではないでしょうか。


そして、「なるべく多くの人がかかわる」ということも重要です。

事業は世の中にある「不」を解決する営みです。

言わずもがな、たくさんの人の目でたくさんの不を見つける方が筋の良い不に出会えるチャンスが高まります。

100人いれば100通りの不が見つかるでしょう。ひとりひとりの生きる環境や価値観が、それぞれ異なる不を見つけさせるからです。

スタディサプリの生みの親である元リクルートマーケティングパートナーズの山口文洋元社長はNewRingという事業提案制度に全社員から提案が出ることを目指しました。

それまでは特定の人だけが応募して、
多くの社員にとっては「自分には関係のないもの」だった社内の施策に
すべての社員に「自分もやってみよう」という気持ちに変えるために
あの手この手を尽くしたと言います。

新規事業提案制度を盛り上げるポスターをつくり、
自ら説明会を行い挑戦心をかきたて、
すべての一次提案にフィードバックの赤ペンを入れ、
最終プレゼンには堀江貴文氏やVC投資家など外部の実践者を審査員に呼んで
社内の空気を変えていきました。(3年かけて4割を超える社員が提案する状態になったとか)

「新規事業の会社」として認知されるリクルートでさえこれだけの努力をしてその文化を創っているのかと身が引き締まります。



3.失敗が個人と組織の“肥し”になる


3つ目の理由は「失敗が個人と組織の“肥し”になるから」です。

新規事業の成功確率はセンミツ(1000回やって3回成功すればよいほう)と言われるほどの低さ。多くの場合は失敗してしまうのです。

ここで大変重要なのは、その失敗を個人と組織にとっての“肥し”、つまり次の挑戦に効く経験へと昇華できるかどうかだと考えています。

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個人にとっての肥しとは、打席に立った経験が残ることです。

誰にも頼まれていない、自分自身が勝手に見つけた課題の解決策を考え、
人を巻き込み事業を創る経験は、既存事業では得られない学びと成長を
個人にもたらすでしょう。

多くの普通の社員にとっての”失敗のバー”が下がり、挑戦の打席に立つことを面白いと思える人材に育つことは、組織にとって確実に大きなインパクトをもたらします。


また、組織にとっての肥しとは、その挑戦をしなければ生まれなかった新しい領域への知見や技術が次に生かされていくことです。

Amazonはオークションサイトに進出し鳴かず飛ばずで撤退した過去がありますが、オークションサイトに挑戦したことで得られた技術やスキームがアマゾンマーケットプレイスの急ピッチな実現の土台になったそうです。

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”普通の人”が多様な観点で事業創造にトライし、
仮に大きな事業に育たずに失敗したとしても
挑戦の過程で培った経験が肥しになって、
次のさらなる挑戦を可能にする。

このサイクルが一度回りだすと、失敗を真に歓迎し、失敗を肥しに新たな事業の種を生み出すことのできる人と組織の土壌を育むことができるのです。


これらが、多くの企業内新規事業を伴走している私たちが「“普通の人”による事業創造をオススメする3つの理由」です。

あらゆる組織の大多数を占める”普通の人”が事業創造の担い手になったら、どんな事業を生み出すことができるでしょうか。


事業創造が一部の人の特権でなく、普通の人が取り組むことが当たり前になることで、目が行き届かず誰の手も差し伸べられていない不がみるみる解決される、そんな世界をつくっていきたいと思います。



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