勝手にチャレンジ1000 0058 カイガラムシとユキヤナギ
寒い。
ユキヤナギの枝に白いものがぽつっぽつっとついている。
小学生のとき、学校の生け垣の枝が石膏のような白いものでびっしりおおわれているのに気づいた。はがそうと爪をかけて力を入れると、ぺきっと簡単にとれる。面白くなってペキペキはがしていったら、表面は固くて白いのだが、木に接している裏側は傷口のように生々しく、潰すと赤い汁がついた。
これ、カイガラムシだ。
そのとき、誰に教えられたわけでもなく、見たこともなかったはずなのにカイガラムシと直感したときの記憶が残っている。不思議なことだが、なぜか、カイガラムシだと思い、そして本当にそれはカイガラムシだったのだ。
記憶を作り替えたのかもしれない。
でも、たぶんマメツゲと思われる学校の生け垣の中を覗き込んで、入り組んだ枝の隙間に腕を突っ込んで素手で剥がしたカイガラムシのペリペリした感触は本当だったと思う。
ポコッポコッと一個ずつ(一匹とは思えなかった)とったり、びっしり連なった塊をペリペリ剥がすと枝の肌が出現る。綺麗になる快感に加え、ふとこれ生き物なのだ、生き物を剥がしている、という残酷な背徳感で面白さ倍増。夢中でカイガラムシを剥がした挙げ句、素手が汚れているのに気づいて急に怖じ気づいて家に帰った。
数年前、玄関のユキヤナギの枝に白いものがポツンとついているのを発見した。良く見るとそれはふわふわとした綿でできた巻き貝のような形にしている。1つ見つけると目が慣れるのかあちこちにポツポツと同じようなふわふわの巻き貝、しかも、おおきさがまちまちで1ミリくらいの白い点から、1センチ近いものまで。大きなものには貝に似た部分に筋目も見えて実に貝っぽい。
そっとつまみ上げると、何の抵抗もなく枝から離れ、しかもなんだか柔らかい。
記憶の中のカイガラムシは硬かったのだが、これは本当に綿をまとったような外見通りふわふわしている。
しらべてみると、カイガラムシは若いうちは柔らかく、しかも移動するらしい。そして、居場所を定めると数年で蝋のような硬い、動かない体になり、そのまま樹液をすって生きていくとか。
動かない成体からどうやって他の枝に繁殖していくのか?と調べてみたら、鳥や虫にくっついて、とか、風にはこばれて、とか、幼生に羽根があって妖精のように飛んでいくものとかあった。カイガラムシの種類も多いようだった。うちのがどういう種類のものかは特に確かめなかったけど、きっとどこからか飛んでくるのだろう。毎年葉の繁る前に枝についているものは取り除くのに、次の年にはやはり白いふわふわのものがポツポツとついている。
今年も冬の間は気づかなかったが、ある日、いつの間にかポツッと白いふわふわが付いていた。
枝には小さな芽が春を待っている。
今とらねばもう、生け垣の中を覗いて腕を突っ込んだ時ほど腕も細くないし、根気もない。
この木はユキヤナギだけど、隣には小さなマメツゲがある。小学校の生け垣はマメツゲとピラカンサだった。鋭い棘のあるピラカンサの茂みに腕を突っ込んだとは思えないから、小学生の私が直感したカイガラムシはマメツゲに付いていたのだと思う。ユキヤナギにカイガラムシを見つけたとき、とっさに隣のマメツゲを心配したが、こちらには付いていなかった。その後もユキヤナギだけに発生する。
ユキヤナギは美味しくて、カイガラムシ的にはこちらが優先されるのか?ユキヤナギは冬には葉を落とすので冬も繁っているマメツゲよりくっつきやすいのか?ともあれ、まだここについてるだけのうちに取り除いてしまうのが肝心だろう。
手袋をして、目で見えるものをざっと取り除いた。
と、この日は寒かったが、noteに書かなきゃなーとおもっているうちに春が来た。
カイガラムシを取り除いた数日後から小さな芽が膨らんであっという間に繁り始めた。今はもうポツポツと、今度は白い花が付き始めている。
ユキヤナギはほっておくと枝が長く伸びて、はば1mほどの小さなスペースだが、かなりのボリュウムになる。びゆんびゅんとしなる様が柳といえば柳のようで白い花がその細くしなる枝に満開になると白い噴水のようだ。
ちょっとトリミングして、ここ数年はお行儀良くなっているうちのユキヤナギ。ユキヤナギのあっという間に咲くけどまた花もあっという間になくなってあとは葉が茂ったただの灌木となる。花がないとただボウボウで見映えも悪いし散髪したくなるけど、なにもいじらず、伸び放題に伸ばして年を越して次の春にあの白い花の噴水を見てみたい気もする。
枝が入り組んでカイガラムシの隠れ家になっちゃうかな。
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