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先行研究探し番外編1 「里山地帯:ビジネス書やビジネス記事」- MBA生の研究tips(7)
前回までは、MBA生が研究活動を始めようとするとき、大きな壁になる先行研究探しを攻略する3つのステップについて書いて来ました。
この3つのステップは、正攻法です。前にも書いた通り、正攻法のステップを踏むにはフルタイムで何年もかかります。時間がなく、研究者を目指すわけではないMBA生に完璧を求めるのには現実的には無理があります。しかし、学術研究活動を体験してみたいというMBA生には、高速圧縮法でよいから、これらの3つのステップを意識して欲しいと思います。完璧でなくてもやってみる意義は大いにあります。
さて、経営学という分野の特徴として、一般的にわかりやすくビジネスを論じた本や雑誌の記事、所謂ビジネス書やビジネス記事がたくさん出版されています。学術文献よりも出版数は多いかもしれません。
前に先行研究の蓄積を深く広大な森林地帯に例えました。ビジネス書やビジネス記事は、人の営み(ビジネスの実践)に近い場所にあって、一般の人々にとって利用しやすい、謂わば里山地帯にあります。
里山に生えている木々は、研究活動で利用してもよいのでしょうか。答えは、里山の木々を利用する際、その木の根っこが森林地帯にしっかりつながっているかを見定めること、です。
世の中にたくさんあるビジネス書・記事は、あるビジネスパーソンの持論や経験を書いただけのものもあれば、普段は森林地帯で木々を生長させるために働いているプロの研究者が、自分の研究成果のエッセンスを研究対象であるビジネスマンや初学者に伝えるために書いているものもあります。著者がビジネスパーソンであっても、先行研究を踏まえて書いている場合もあります。
まず、研究者が自分の研究成果を一般に伝えるために書いているビジネス書や記事は、MBA生の研究の入り口としてむしろお勧めです。MBAの授業でも、この種類のビジネス書や記事を参考文献として紹介することは多いです。さらに興味を持った人は、その著者の本格的な論文を検索して読むと良いです。
ビジネスパーソンが書いている本や記事については、少なくとも「・・・の秘訣は・・・だ」と根拠もなく断定しているようなものは、著者の持論を書いているだけなのでお勧めしません。一方で、先行研究も踏まえて、自分の経験をそれに結びつけつつ、体系的に論じている本や記事は、参考にしてもよいものもあります。その区別は大変難しいので、教員に聞いてみるとよいと思います
ハーバード・ビジネスレビューというハーバード・ビジネススクール出版が出しているビジネス誌がありますが、この雑誌は旬の研究者やそれなりの学識を備えた実務家に寄稿を依頼しているので、森林地帯にしっかりつながった里山の木と認識されています。学術論文に先行研究として引用されることもあります。
以上は、学術論文の先行研究レビューの章に引用する著書・論文の場合であって、例えば論文の最初のあたりに、ビジネスの現場ではこのようなことが言われていると論じる箇所では、実践者の持論や経験も立派なデータなので引用しても構わないと思います。
MBA生の研究活動のtipsを書いています。
書くこと
読むこと
理論との付き合い方
先行研究探し
そもそもなんでMBAに入るの?