先行研究探しのステップ1 「森の中の林を見定める」- MBA生の研究tips(4)
前回にも触れましたが、MBA生が論文等のアウトプットを出すことを目指して研究活動を始めるとき、自分の実務に根ざした問題意識を、どのような先行研究に結びつけていったらよいのかそもそもわからない、という障壁につきあたります。
試しにgoogle scholar(https://scholar.google.com/)で自分の研究課題のキーワードを入れてみましょう。ーーなかなかうまくいかないはずです。それらしき研究が全然出てこない?それとも、おびただしい数の文献が出てきて、どれから読んでいったらよいかわからない?
自分の言葉で検索して、それらしき論文が出て来ないからと言って、先行研究がない(だから自分が初めてこの研究をする!)と思うのは早計で、まあだいたい、入れたワードのピントが外れているのです。反対に、大量すぎる論文が出てくる場合は、ワードが一般的過ぎるのです。
MBA生が理論的にはほとんど真っ白な状態から何かのテーマで先行研究を探し始めるのは、古今東西の学問知識蓄積全体を深く広大な森林地帯であるとすると、その中のある専門分野の森の、ある林の、ある木の、ある枝の、ある葉っぱを探すのに似ています。常に新しい葉っぱや枝や木が生え、相互のつながり方も変化していくので、専門研究者であってもその森の全容を把握しているわけではありません。ましてや、初学者がいきなり検索しても、適切な葉っぱにたどり着けるものではありません。
森の中の葉っぱ探し、つまり先行研究探しには3つのステップがあります。第1のステップは、森の中の大きな林をひととおり知った上で、自分の研究課題がどの林に関係するのかを見定めることです。
ビジネススクールでは、戦略、マーケティングなど主要な専門分野に基礎的な科目が用意されているのが通常で、教科書なども使いながらいくつかのトピックに触れていきます。この授業のトピックや教科書の章がその専門分野の森の主要な(最低限おさえるべき)林になります。その上で専門科目などでは、林の中の木や枝葉、あるいはそれほど大きくない林にもある程度触れることになります。
基礎科目でも専門科目でも、研究を自らおこなっている教員は、テーマ毎に参考文献リストを示してくれるはずです(実務家教員や極めて実践的な科目ではそうでないかもしれませんが)。教科書にもたいてい章ごとに参考文献リストがついています。参考文献リストは、先生達がこの林にはこのような木や枝葉があるよと示してくれているわけで、大変貴重な情報源なのです。
先行研究探しの最初のステップは、自分の研究課題が授業のトピックや教科書の章のどれに関係が深いかを考え、そこに引用されている文献を読んでみることです。授業でも、教科書でも、すべての林(トピック)を紹介することはできませんから、1つの教科書で飽き足らなければ、他の教科書もあたってみます。また、実務に根ざした問題意識は、複数の専門分野にまたがることが多いので、他の森(専門分野)の授業や教科書も関連していないかざっと見回してみます。
MBAの1年目は、授業の課題をこなすのが精一杯だと思いますが、夏休みなどを利用して、自分の課題に関係がある森や林について、授業や教科書の参考文献を手がかりに早めに読み進めておくことが、その後の充実した研究活動のためにはお勧めです。
長くなりましたので、先行研究探しのステップその2、その3は後日書きます。
MBA生の研究活動のtipsを書いています。
書くこと
読むこと
理論との付き合い方
そもそもなんでMBAに入るの?