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目の前の現実→理論は大変だけどMBAならではの価値が出る - MBA生の研究tips(3)

MBAに入学するほとんどの人は、自分の実務経験に基づいた問題意識を強く持っています。目の前の現実で生じている問題の答えを教えてもらえるかな?と期待してMBAに入って来る人も少なくないかもしれません。

残念ながら、ビジネスのような現実の複雑な問題に、教科書の巻末に付いているような意味での答えはありません。でも、MBA、というよりも学問の場は、複雑な現実をある方向から見て、より深く理解し、これからの方策を考えることを可能にする機能、すなわち理論を提供しています。

理論によって現実を見ることは、授業でもおこなわれますが、たいてい教員が注意深く事例などを用意して説明するので、学生はそのロジックと現実との対応関係を考えればよいだけです。

ところが、MBAの後半あたりに自分の問題意識に基づいて研究活動をし、論文等を書く場合は、自分の直面している現実の問題を、どのような理論から見たら良いのか、そこからわからない、というハードルがあります。

このハードルは、MBA生にとっては、学部から上がってきた研究者養成大学院の院生にとってよりも高いだろうと思います。研究対象が企業経営であっても、企業で働いたことのない学生ならば、まず理論いろいろを学び、理論の流れを理解し、理論潮流に対応する現実の問題を見つけ、研究対象にするのです。まず理論、次に現実です。

しかし、MBA生は、目の前の現実が出発点ですよね。教員だって、その生々しい現実をどのような理論潮流に位置付けて研究したらよいのか、唯一絶対の正解を知っているわけではありません。

加えて、MBA生はフルタイムで研究に専念しているわけでなく、自分の直面している現実に関係する多種多様な理論の流れを学ぶ時間はなかなかありません。教員は助けてはくれると思いますが、目の前の現実から出発して理論に位置付けることはそもそも大変な難事業なのです。

効率的に論文を書くことだけを考えるならば、ある理論の流れを集中的に学んで、条件を少し変えたり、先行研究の指標を組み合わせるなどして、論文のバリエーションを作るのが手っ取り早いです。実際、そのようにして書かれた論文はこの世に存在します。(私はそのような研究を、研究者の真の問題意識のない「心のない研究」と呼んでいます。)

でも、私は、MBA生には、MBA生だからこそ、「心のない研究」をして欲しくないのです。先行研究の精査が少々甘くても、論理の組み立てにいろいろ突っ込みどころがあっても、それでも、自分の目の前の現実から出発して、理論への位置付けに苦しみながら試行錯誤して書き上げた「心のある研究」は、心のない研究よりもずっと理論の世界に貢献すると信じています。


MBA生の研究tipsというシリーズとして時々書くことにいたしました。

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